1256年 (建長8年、10月5日 改元 康元元年 丙辰)
 
 

6月2日 辛酉
  奥大道夜討ち強盗蜂起し、往反の旅人の煩いを成す。仍ってこの間度々その沙汰有り。
  警固を致すべきの旨、今日彼の路次の地頭等に仰せ付けらる。所謂、
   小山出羽の前司    宇都宮下野の前司   阿波の前司
   周防五郎兵衛の尉   氏家の余三跡     壱岐六郎左衛門の尉
   同七郎左衛門の尉   出羽四郎左衛門の尉  陸奥留守兵衛の尉
   宮城右衛門の尉    和賀三郎兵衛の尉   同五郎右衛門の尉
   葦野の地頭      福原の小太郎     渋江太郎兵衛の尉
   伊古宇の又太郎    武蔵平間郷の地頭   清久右衛門次郎
   鳩井兵衛の尉跡    那須肥前の前司    宇都宮五郎兵衛の尉
   岩手左衛門太郎    岩手の次郎      矢古宇右衛門次郎
    已上二十四人
  御教書に云く、
   奥大道夜討ち強盗の事、近年蜂起を為すの由その聞こえ有り。これ偏に地頭沙汰人
   等沙汰無きの致す所なり。早く所領内の宿々、宿直人を居え置き警固すべし。且つ
   は然る如きの輩有らば、自他領を嫌わず、見隠すべからざるの由、彼の住人等の起
   請文を召され、その沙汰を致さるべし。もし猶御下知の旨に背き緩怠せしめば、殊
   に御沙汰有るべきの状、仰せに依って執達件の如し。
     建長八年六月二日       相模の守 判
                                   陸奥の守 判
    某殿
 

6月5日 甲子
  御教書違背の咎に於いては、所領を召さしめんが為注進せしむべきの由下知すべきの
  旨、五方引付に相触れらるる所なり。
 

6月7日 丙寅 雨降る
  凡そ今年の大雨洪水、殆ど例年に越ゆ。寒気また以て時ならず。暑さ信ならず。その
  物定めて長ぜざらんか。これに依って鶴岡別当僧正隆弁・左大臣法印厳恵等に仰せ、
  天下太平の御祈祷を行わるる所なり。去る寛喜二年の夏、涼気冬天の如く、六七両月
  の間霜雪降り、八月大風、翌年国土飢饉、民間傷死す。而るを今時節の不調、慎しま
  ざるべからざるか。
 

6月8日 丁卯
  尾張の三郎平頼章卒す(時章二男)。
 

6月14日 癸酉 霽
  巳の刻光物見ゆ。長五尺余り、その躰初めは白鷺に似たり。後は赤火の如し。その跡
  白布を引くが如し。白昼の光物尤も奇特と謂うべし。本文の所見に有りと雖も、本朝
  に於いてその例無しと。また近国同時に見ると。

[百錬抄]
  今夕、天皇閑院に還御す。この日、八幡宝殿鳴動す。午の刻、楼門上より白旗に似た
  る物立ち上がり飛行するの由、奏聞を経ると。
 

6月21日 庚辰
  相州の姫君魚味を嘗め御う。
 

6月23日 [北條九代記]
  長時評定に加う。引付を経ず。
 

6月26日 乙酉 去る夜より雷雨
  今日相州御除服。始めて出仕せしめ給う。
 

6月27日 丙戌 雨降る
  奥州禅門の息女(宇都宮の七郎経綱妻)卒去す。去る比流産、その後赤痢病を煩うと。
 

6月29日 戊子
  放生会御参宮供奉人の事、越州例に任せ惣人数を注し、御点を申し下す。
   陸奥の守        同三郎        武蔵の守
   同太郎         同四郎        同五郎
   同八郎         北條の六郎      遠江の前司
   同太郎         同次郎        相模右近大夫将監
   陸奥左近大夫将監    同六郎        同七郎
   越後右馬の助      刑部少輔       遠江の七郎
   越後の守        相模式部大夫     同八郎
   駿河の四郎       備前の三郎      上野の前司
   同三郎         中務権大輔      足利の次郎
   同三郎         上総の三郎      佐渡の前司
   同五郎左衛門の尉    出羽の前司      同次郎左衛門の尉
   同三郎左衛門の尉    同七郎        城の次郎
   同三郎         同四郎        武籐少卿
   同次郎兵衛の尉     秋田城の介      千葉の介
   遠江の守        同三郎左衛門の尉   三浦の介
   同五郎左衛門の尉    長井の太郎      前の太宰の少貳
   同次郎左衛門の尉    同三郎左衛門の尉   下野の前司
   同四郎         同七郎        和泉の前司
   同次郎左衛門の尉    小山出羽の前司    伊豆の守
   日向の守        河内の守       同三郎左衛門の尉
   筑前の前司       同次郎左衛門の尉   上総の介
   同太郎左衛門の尉    大隅の前司      同修理の亮
   周防の守        同三郎左衛門の尉   梶原上野の介
   同太郎左衛門の尉    越中の前司      同右衛門の尉
   新田参河の前司     佐々木壱岐の前司   那波左近大夫
   同太郎         伊賀の前司      後藤壱岐の前司
   同新左衛門の尉     安藝の前司      同右近大夫
   長門の守        伊勢の前司      対馬の前司
   摂津大隅の前司     縫殿の頭       能登右近大夫
   同右近蔵人       大曽彌次郎左衛門の尉 同太郎
   周防修理の亮      小野寺四郎左衛門の尉 同新左衛門の尉
   伊賀次郎左衛門の尉   足立三郎左衛門の尉  同三郎
   大見肥後次郎左衛門の尉 同四郎兵衛の尉    薩摩七郎左衛門の尉
   和泉五郎左衛門の尉   同六郎左衛門の尉   肥後次郎左衛門の尉
   狩野五郎左衛門の尉   同太郎        足立太郎左衛門の尉
   信濃四郎左衛門の尉   武藤右近将監     土肥三郎左衛門の尉
   同次郎兵衛の尉     同四郎        阿曽沼の小次郎
   伊豆太郎左衛門の尉   茂木太郎左衛門の尉  常陸太郎左衛門の尉
   宇都宮五郎左衛門の尉  同次郎左衛門の尉   同八郎左衛門の尉
   同修理の亮       常陸次郎左衛門の尉  山内新左衛門の尉
   山内籐内左衛門の尉   大須賀次郎左衛門の尉 同新左衛門の尉
   紀伊次郎左衛門の尉   河越の次郎      小山の七郎
   進三郎左衛門の尉    伯耆三郎左衛門の尉
  御点の散状(次第不同)
   陸奥の守        同三郎        武蔵の守
   同太郎         同四郎        同五郎
   同八郎         北條の六郎      遠江の前司
   同太郎         同次郎        相模右近大夫将監
   陸奥左近大夫将監    同六郎        同七郎
   越後右馬の助      刑部少輔       遠江の七郎
   越後の守        相模式部大夫     同八郎
   駿河の四郎       備前の三郎      上野の前司
   同三郎         中務権大輔      足利の次郎
   同三郎         新田参河の前司    佐々木壱岐の前司
   那波左近大夫      同太郎        伊賀の前司
   後藤壱岐の前司     同新左衛門の尉    安藝の前司
   同右近大夫       長門の守       伊勢の前司
   対馬の守        大隅の前司      縫殿の頭
   能登右近大夫      同右近蔵人      大曽彌次郎左衛門の尉
   同太郎         周防修理の亮     小野寺四郎左衛門の尉
   同新左衛門の尉     伊賀次郎左衛門の尉  足立三郎左衛門の尉
   同三郎         肥後次郎左衛門の尉  同四郎兵衛の尉
   薩摩七郎左衛門の尉   和泉五郎左衛門の尉  同六郎左衛門の尉
   肥後次郎左衛門の尉   狩野五郎左衛門の尉  同太郎
   足立太郎左衛門の尉   信濃四郎左衛門の尉  武藤右近将監
   土肥三郎左衛門の尉   同次郎兵衛の尉    同四郎
   阿曽沼の小次郎     伊豆太郎左衛門の尉  同次郎左衛門の尉
   宇都宮五郎左衛門の尉  茂木左衛門の尉    常陸太郎左衛門の尉
   同八郎左衛門の尉    同修理の亮      常陸次郎左衛門の尉
   佐竹の次郎       山内新左衛門の尉   山内籐内左衛門の尉
   大須賀次郎左衛門の尉  同新左衛門の尉    紀伊次郎左衛門の尉
   河越の次郎       中山左衛門の尉    小山の七郎
   進三郎左衛門の尉    伯耆三郎左衛門の尉  同三郎
   風早の太郎       渋谷左衛門の尉    伊東八郎左衛門の尉
   遠江の大炊の助太郎   伯耆四郎左衛門の尉  相馬次郎兵衛の尉
   同孫五郎左衛門の尉   薬師寺阿波四郎兵衛の尉 千葉の七郎太郎
   淡路の又四郎      式部太郎左衛門の尉  同兵衛次郎
   武石の四郎       同三郎左衛門の尉   淡路五郎左衛門の尉
   鎌田三郎左衛門の尉   大曽彌五郎兵衛の尉  押垂左衛門の尉
   平賀の新三郎      遠江十郎左衛門の尉  鎌田次郎兵衛の尉
   内藤肥後三郎左衛門の尉 内藤豊後次郎左衛門の尉 江戸の七郎
   小田左衛門の尉     常陸次郎兵衛の尉   式部八郎兵衛の尉
   長掃部左衛門の尉    同長次郎右衛門の尉  内藤肥後の六郎
   彌次郎左衛門の尉    同新左衛門の尉