うぅ〜。昨夜のディスコが効いていて体がだるい。しかし、今日もジム先生のダンステクニックVはあるはずなので、体を引きずるようにして朝食へ。
土曜日は入れ替えの日で、帰ってしまう人たちがきちんとした服を着て座っているから、ちょっといつもとは違う雰囲気だ。早々と朝食を終わった人たちは、鍵を返し、抱き合ってさよならのキスをして次々と去って行く。
今日は私の生徒さん、Momoちゃんがサマースクールに来る日。OLの彼女はお休みが長く取れないので一週間コース、しかも私の様に前日ロンドンで一泊せずに、キャセイでヒースローについた後、空港からワットフォードまでのコーチでまっすぐここにやってくるはずだ。
ダンステクニックとモーブのゼネラルが終わった後、ダイニングで姿を探すが見つからない。受付をしているネルに聞いてみると、もう随分早くにやって来て(そうだろうなぁ。ロンドンに行くより近いもの)誰かが宿舎まで連れていってくれた、とのこと。部屋は私達と同じ階で、フランスのシルフィーがいた部屋だというので、とりあえずお茶を飲んでいると、来た来た!さっき着いたとは思えないくらい元気そうだ。
ボードでMomoちゃんの先生を確認してあったので、エミリー達に紹介する。ついでにリリアにも「私の生徒です。」と紹介すると、目を細めて彼女に話しかけてくれた。Momoちゃんが「英語がよく喋れないから心配です。」と言うと、小さい子供を励ますように、綺麗な目をみはって一言、「Enough!」と言ったのが可笑しかった。Momoちゃんは日本でもとても若く見えるから、きっと彼女には中学生くらいに見えたのだろう。
午後からはフリーなので、今年はMiyu先生、Momoちゃんと一緒に、前々から行きたかったハットフィールド・ハウスに行くことにする。
ハットフィールド・ハウスは、エリザベスT世が幼少の頃を過ごした館として、また庭園が美しいことで有名だ。キャンパスからはバスで1時間くらいのところにある。ガイドブックにはワットフォード駅正面と書いてあって便利そうだったが、路線が違うので一度ロンドンに出ないと行けないと聞いたので、バスで行ってみようかということになった。
バスはなかなか快適。田舎のほうなので、乗って来る人ものんびりした感じ。いままでキャンパスの回りの町にはあまり行ったことがなかったので、いろいろな町を通過して行くのが面白かった。
ハットフィールド・ハウスは、確かに道を挟んだ駅の正面。だけどバスもほぼ真ん前に着いて便利だ。門のところの受付でお金を払って「館は5:00までしか見られないけどいい?」と確認される。途中Radlettの町でお昼をゆっくり食べてしまったので、既に4時に近い。館はこの門からどのくらいあるのか聞いておけばよかった、と思いついたのはだいぶ歩いたところで。あせる…
やがて道が大きく曲がって館が見えてきてほっとした。私達の足なら十分間に合いそう。大きな駐車場があって、車で来ている人が多いようだ。庭で有名なだけに、途中ガーデニンググッズを売った店もある。ピクニック・バスケットをもってベンチに座っている人たちもいて、次回はサンドイッチを持ってきてゆっくりしてもいいな、と思う。今年はちょっと寒いけれどね。
まず、館から見学。このジャコビアン様式の壮麗な館は、エリザベスT世の腹臣ロバート・セシルが建築したもの。壁や柱の木彫が本当に見事。エリザベス1世の肖像画や手袋などがあるが、特に直筆の手紙が興味深かった。古伊万里のようなチャイナが沢山置いてあるのも印象的。もっとゆっくり見たかったけれど、時間がないので庭の方に行ってみる。
庭は西と東に分かれていて、片方は決まった曜日にしか公開されていないらしい。私たちが行ったのは、エリザベスT世が幼少期を過ごしたオールド・パレス側---木のトンネルの小道、噴水を中心とするフラワーガーデンとハーブが沢山植えてあるセンティッド・ガーデン。フラワーガーデンは四隅に生垣で囲われたベンチが置いてあって、座ってみると妙に落ち着く。昔ここで密会や内緒話があったのかしら、と思うとなんだかどきどきしてしまう。
ハーブ園も、春と夏の花がいっぺんに咲いていて素敵。ラベンダーなんか、やっぱり気候があっているせいか勢いが違う。いつまでも和んでいたかったが、夕食に間に合うように帰らないといけないので、残念ながら引き上げた。
バスにのってしばらくすると、真っ黒な雲がみるみるうちに広がって、バケツをひっくり返したような雨が降り始めた。ちょうどいいタイミングでバスに乗れてよかった、よかった。
あまり外もよく見えないし、なんだか眠い。まわりを見まわすと、他の乗客もみんな目をつぶって、こっくりこっくり。外国だけど、田舎だからかしら。珍しい光景だ。
このバスは、実に時刻に正確に運行されているようで、あらかじめ入手しておいたバスの時刻表と時計を見比べると、今どこを走っているのかが分かる。安心して私もちょっと居眠り。Miyu先生はとうに夢の中だ。
途中、後ろの座席に座っていたMomoちゃんが起こしに来て、空を指差す。もう雨は上がっていて、空には大きな虹!
さえぎる山がないので、完全な半円だ。すご〜い!
思わず「Over the Rainbow」の歌が頭をよぎる。
Momoちゃん、起こしてくれてありがとう。(それにしても、彼女は元気だ)
入れ替えの土曜日は、ロンドンに出てミュージカルを見たりしていたけれど、こうして近所に出かけるのも面白い。意外とバスが便利なことが分かったし、ハットフィールド・ハウスにももう一度行ってみたいので、来年からあちこち近くに出かけてみる事にしよう。