サマースクール旅日記 (August.1999)
 
     
  19日(木)試験前日

あぁ、もう明日は試験&リサイタル。考えると緊張してくる。今年から試験は5段階評価になったので、アンヌマリーは「パスするレベルが低くなった」と喜んでいたけれど、私は逆に、ここ数年取れていたディスティンクション(1番いい成績)の基準が厳しくなったんじゃないかと心配。睡眠不足が続いているので、ヒール・オフのポジションズがなかなかきまらないから困ってしまう。なんとか今日は良く寝れますように。

モーブのクラスをいつもの様に受け、夕方リサイタルのダンスの練習に行く。
みんなで踊る「AXEL F」は、やっぱり楽しい。ことさら作らなくても、にこにこしながら踊れる。明日の衣装は、単色のレオタードといろんな色がミックスした派手なタイツ。私は黄緑色の背中が大きく開いたハイネックのレオタードと、オレンジを基調とした緑や豹柄や青がまざったタイツをはくことにした。
「Romantic Interlude」(これがペアのダンスのタイトルだった)では、ルイの腕力が日に日についていくような気がするのは、錯覚だろうか。私が部屋でひそかにツイストを入れた腹筋運動をしているように(本番でオール イン ワンのレオタードを着ても、ルイが肋骨の下の正しい位置を持ちやすいよう、くっきりしたウエストを作るため)、ルイも懸垂か腕立て伏せをやってたりして… 時々完全に手が離れるぐらい空中に放り投げられて、びっくりすることがある。
この日は昨日言われた「Togather」を意識して、感情を込めて踊ってみる。エミリーはうっとりした様子で「Oh! Beautiful!」を連発。自分で振りつけたダンスなのに、と思って可笑しいやら、ちょっとくすぐったいやら。

気を良くして、マリリンの振付の練習を見に、ルイについてダンスシアターに行く。ちょうど「Tourbillon」の練習があっていたが、Momoちゃんは前に見た時よりずいぶん上手になっていた。頑張れ頑張れ! 始めて来たサマースクールで、まだホワイトなのにダンスリサイタルに誘われるなんて、なかなかないチャンスなんだから。
練習が終わったところで、ルイが「ちょうどいいから、ここでRomantic Interludeを1回踊ってみよう」という。えぇっ〜! 今? 日本人がこんなに間近に見ている前で? ちょっと照れるよなぁ、と思いながらも、場当たりをしておいた方がいいというのは確かなので(明日の本番はこのダンスシアターである)、やってみる事にする。
当然のことながらライトも音楽もなく、「Togather」を意識してなんてちょっと困難。他の国の人の前だったら、気分出して踊るのは平気なのに。 少なくとも自分の先生のMiyu先生だけだったら、頑張ったところを見てもらいたいと思うだろうけれど、Nanami先生やRitsuko先生の前で(2年前にルイと同じ列で目を合わせて手を振るのをやっただけで、「あなた、ルイとみつめあってたわね」と言われたのに!)、頬を寄せ合ったり、寄り添って目を見つめあいながら歩いたり、抱き合ったり、を気分を出してなんて出来るもんか! でもルイは全然平気みたい。むしろマリリンにはちょっと誇らしげ。まぁそうだよね、私を軽々とリフト出来るようになったんだもの。
終わった後で、ルイがマリリンに「Setsuは…?(フランス語なので、自分の名前しか聞き取れない)」と言っているのが聞こえた。振り向くと、マリリンがじろり〜と私を見て、「ウイ」とちょっと憮然と答えているのが見えた。こわ〜い。マリリンの秘蔵っ子のルイと、彼女以外の振付でペアを踊っているんだもの。おまけにマリリンの「Tourbillon」は、同じエミリーの「AXEL F」のために断ったという引け目がある。普段はフレンドリーで楽しい彼女も、今年はなんだかちょっと怖い。

夜のイベントはチルドレン・ショー。先週もすごく良かったので今週も見応えがあるだろうが、明日が試験だと思うと、とてもそんな気分になれない。Momoちゃんには「絶対見たほうがいいよ。楽しんでおいで」とすすめて、自分は部屋でモーブの復習をやった。早く寝ようと思いながらも結局いつもより遅くなり、明日のバランスが心配。まぁ、この緊張感がいいんだけれどね。