サマースクール旅日記 (August.1999)
 
     
  20日(金)試験とダンスリサイタル

いよいよ今日は試験。いつものM1の部屋で、一人でしっかりウォーミングアップしてから出かける。
会場は体育館。今回の受験者はえらく少なくって3人しかいないのに、ここは余りにも広すぎる。自分の能力以上に気張って走ったりしないように、気をつけなくっちゃ。
試験官は、ジム先生とマリーだった。見てもらえるならジム先生が最高だけれど、最近世代交代が進んでいるとはいえ、まだ若いマリーが試験官とは驚きだ。
始まってみると、音楽テープが実にひどくて愕然とする。アドバンスの新しいテープが出来て以来、「このエクササイズは、ダブル・イントロダクション。」と言われてわざわざ練習してきたものも、古いびろびろの録音でシングル・イントロダクションになっている。バランスの音もちがう曲だし、ランニングのテンポは練習していた時の1.5倍速ぐらい。やりにくいこと、この上ない。
ちょっとマリー、試験テープは、面倒くさがらずにちゃんとしたのを作ってよ!
「あぁ、私の練習してきた2年間が〜」という虚無感に引きずりこまれないように必死。アンヌマリー、ルイも、なんだなんだこれは〜! という表情だ。
終わってしまってお疲れ様と言われると、疲れてというよりも気落ちして、3人とも体育館の隅にへたり込んで口をきく元気もない。黙々と採点していた試験官を見送った後、アンヌマリーに「大丈夫?」と声をかけると、案の定「音楽がひどくってガックリしたわ」と返ってきた。2人であれがひどかった、これがうまくいかなかったと話しているうちに、私達はだんだん元気になって来たけれど、ルイはガックリうなだれたまま。「じゃぁ、またあとでね」とぽつりと言うと帰っていった。かわいそう。。。

リハーサルを慌しくすませて、夕食。今日はリコッタチーズとほうれん草のカネロニ。美味しくてもりもり食べてしまう。「しまった! 今日はいつもと違って夕食後に踊らないといけないのに、今までのダイエットが水の泡じゃん。」と思ったけどあとの祭だ。

今週のダンスリサイタルは、曲目が多いせいかいつもより15分早く始まるので、コーヒーをゆっくり飲む暇もなく、本番が始まった。エミリーのグループダンスの「Axel F」は一番目、ペアの「Romantic Interlude」は12番目。今回はゆとりがあるので、見たいのがいろいろ見れて助かる。
ルイは5曲も出るので大変だが、まだ試験の落ちこみから立ち直っていない様子。そう言えば、いつもは夕食時に試験結果が張り出してあるのに、今回は何故かまだだ。もめているのだろうか? それともショックを与えないように、リサイタル後に出すつもりだろうか? いやだなぁ。

「Axel F」を踊ったあと走って表に廻り、マリリンがルイに振りつけたソロ「L'envol」を見る。ちょっと元気がないけれど、相変わらずすごい跳躍。動きが速くて、写真に取れないのが残念だ。マリリンとのコミカルなダンス「Clown」でやっとふっきれたらしく、調子が出てきて、良かった良かった。「Romantic Interlude」は、「Togather」の気分は兎も角として、練習の甲斐あってリフトのタイミングは、ばっちり。後半ルイがあせっていて音があまったのが残念だったけれど、たぶん始めて見る人には分からなかっただろう。終わって取りあえずほっとする。

休憩の間に試験結果が出ていて、サラが教えに来てくれた。モーブは全員パス。ルイと私にはクオリティが付いた。嬉しい! ルイは私より一つ下の評価だったけれど、もっと最悪を予測していたのかリラックスした表情。後半はジム先生の振付「Iago's Fantasy」を踊らないといけないから、すっきりして良かったね。

もう出るものもないし試験結果もわかったし、後半は落ち着いて観客席に腰を据える。
今週はレベルがすごく高くて、見応えがある。

「Pavane for Dido」(左)は、手足の長いレオナの特徴を生かし、MMMらしいラインを良く使った美しい動き。

その他、見入っていたので写真は取れなかったが、ダイアナの娘 ジューンの「Bacchante」は、マーガレット モリスの再来かと思うようなダンス。衣装も、自分で染付けからやったとか。素晴らしい!

「Iago's Fantasy」(右)は、「オセロ」の中のイアーゴの心情を語る、ジム先生らしいドラマチックな振付。ルイは練習の時よりずっと乗っていて、感情表現と表情がすごくいい。ジム先生そっくりになる場面があって、気合の入れ様がわかる。さすが、シャウトされながら激しい練習をしてきただけのことはあると思った。

リーナの娘、リセットが踊った「Freedom」は、映画の「ブレイブ ハート」の処刑の場面のサントラ版を使っていたが、鳥肌が立つほどよかった。ティーンズにしてこの出来!将来はお母さん譲りのいいダンサー&振付家になるだろう。

ファイナルの「Calypso」(下)は、クリエイティブ クラスに出た生徒の出演だったけれど、年齢も様々、うまい下手に関わらず、皆が楽しんでダンスをしているのがとても良く伝わってきて、こちらまで楽しかった。

 

リサイタルの後は、お決まりのパーティー。あぁ、試験が終わった後のこの開放感! たまらないよね。沢山の人から、ルイとのペアがとってもきれいだったと褒められて嬉しい。
今夜は荷造りしなくちゃいけないから、早く部屋に帰ろうと思いながら、またまたシアターで2時まで踊ってしまった。最後の夜だ。いいんだもん。