第3回原宿句会
平成2年12月14日 大和証券会議室

   
兼題 木枯し 時雨 炬燵
席題 花八つ手


  東 人
ヘアピンを磁石に留めて切炬燵
ピアノ音洩るる藁葺き花八ツ手
木枯しや一音ずれし神の鈴
行きずりのひとと逃げこむ初時雨

  内人
障子越し読経とぎれおり花八ツ手
南画背にのの字のの字の掘ごたつ
木枯らしや文楽向かう鈴が森
銀婚式目で語り合う掘ごたつ

  玄 髪
旅先の炬燵のしみに歴史みゆ
手酌酒窓の外には花八ツ手
住みなれし家に木枯し手にバッグ
待人の心知らずや初時雨

  利 孟
交番に赤き灯点り横時雨
悠紀の田に護り人は無し村時雨
建て付けの悪き戸引ける時雨かな
豆腐屋の喇叭が過ぎて花八っ手

  香 里
垣間見る花八ツ手にはきそうじ
声高くこたつにみかんでなごやかに
手をこする木がらしの中待ち合わせ
澄んだ空木がらしのあとの大掃除

  若 夫
風花のふゞく花街花八ツ手
過ぎ去りし想ひ出話冬こたつ
こたつ掛けひっぱり合いのかくれんぼ
木枯らしは秩父宮によく似合い

  角 田
炬燵なき身に嬉し今年の風
庭隅にひときは厚く八ツ手咲く
木枯らしに心浮き立つ吾子の汗

  健 次
都会では木枯らしを待つスキーヤー
時雨とは許し難き暮の雨
木枯らしに代りて雷ドドと鳴る