第回5原宿句会
平成3年5月8日

   
兼題 鯉幟 若葉 枇杷
席題 金魚


  東人
手になじむ三角定規窓若葉
客もまた野球聴きをり金魚売り
薄紙に種を吹き出し枇杷啜る
縦に身を捩り綱引く鯉幟

  内人
人妻の襟足白し枇杷のころ
風ごとに笑ひさざめく若葉かな
移ろひしアルバム開き枇杷を剥く
ゆらゆらと影を踏みつつ金魚売り

  玄髪
路地裏でそっと一服金魚売り
初枇杷をあわてて喉につまらせり
恋人の方組む苑の若葉かな
犬じゃれて揚げる間もなき鯉のぼり

  白美
入る時はなかりし門の蔦若葉
鯉のぼりギョロ目を背中に子が走る
沈酔し一人見合う金魚かな
大篭の枇杷を撰る手の皺深し

  京子
若葉陰みどり児あやす手の稚き
高々と初子あやすや枇杷のころ
けうとげな声懐かしき金魚売り
この家にも孫生れにしか鯉のぼり

  千尋
雨どいのみどろの水に和金の朱
セルロイドケーキに立てよう鯉のぼり
鯉のぼり団地に響く子らの声
街若葉初心者マークも息を抜き

  浄
鯉のぼりエアコンにそよぐ出窓かな
独りっこせめて群れなす鯉のぼり
落葉松の若葉はじけり軽井沢

  瑞夫
花みず木ピンクと白が競い合い
新緑の五百重に映える彦根城
新緑に昔をうつす明治村
茶畑に影がなみうつ鯉のぼり

  利孟
藻とともにゆれる袋の金魚かな
せせらぎを聞きて蕎麦喰う若葉かな
雲水の槌てる板木や山若葉
川渡す鯉幟見る老多し