144回原宿句会
平成13年6月4日

   
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  東人
父の日や父の履歴に復員日
目に走る飢ゑの癇脈燕の子
六月の電車声なく詰め合ひぬ
苔清水汲んで矢立の壺に注す
梅酒漬ける蓋の隙間に蝋垂らし

  千恵子
六月の空押し上げてシーツ干す
子燕に乗つ取られたる銃器店
腹這ひて獣のやうに清水飲む
夏木立覗き込まれる乳母車
梅の実の沈みて酒は色深む

  正
風土記読む甲斐に伝はる岨清水
怖きもの知らず子燕翻る
母の通夜母の作りし梅酒飲む
水清き天狗の杜や朴の花
六月の稿を積み上げ兜町

  箏円
鍵穴の外に風ある薄暑かな
定まらぬ身のおきどころ梅酒の実
燕の子足りぬ翼で空捕ふ
二坪の市民農園麦青む
真清水や主題歌で知る朝ドラマ

  美穂子
一隅を得て子燕の鳴き騒ぐ
六月の夜の重たき奥座敷
一病の癒えて梅酒の琥珀濃し
老木の根をくねり出て苔清水
青梅のなりしより時急ぎ出し

  和博
六月や伽羅の香微か雨兆す
あぢさゐやステンドグラスのマリア像
神棚に梅酒供へし下戸の父
見目よりも声を大事に燕の子
山清水飲み終へし後鳥の声

  白美
古梅酒姑への愚痴とどまらず
隣家より留守を頼まれ燕の子
六月や株主総会荒れ模様
御利益の清水溢るる錫の杓
黒南風や口上長きワイン商

  利孟
六月の乙女真珠に飾られて
「飲めます」の木札に苔や石清水
包みたる新聞黄ばむ梅酒かな
燕の子胸に巣の土背なに梁
首に鳴る携帯電話薄暑かな

  武甲
紫陽花の色定まらず民意聴く
子燕や意を決しての初飛行
六月や答申急ぐ諮問会
湯上がりの火照りを冷ます梅酒かな
登攀の息整へて山清水

  翠月
子燕の日ごとに育つ軒の声
六月やこだまの返る山の駅
間欠の底に砂の輪苔清水
ましら酒飲む老の一徹通しけり
母の日の色目気遣ふ贈り物

  明
六月や空の色ほど気も塞ぎ
清水汲む清しさ五臓六腑まで
梅酒飲んで後に恨めし瓶の底
いつの間に宙返りして燕の子
知らぬ間に庭の金雀枝金屏風