第168回原宿句会
平成15年6月7日:東京競馬場出張句会

   
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  希覯子
戒名の二字は朱書や走り梅雨
女子寮や仙人掌好きの老守衛
試飲するビールラベルの半乾き
ダービーや人馬一如を眼のあたり

  和博
痩せ馬の背なを洗ひし走り梅雨
力こぶ浮かせビールを干しにけり
仙人掌の花にきのふとけふ の雨
夕暮れの植田の先の一軒屋
息の止む刹那ダービー出走す

  白美
焼鱧の入る弁当会議果つ
仙人掌の花にかげろふ砂の街
馬駆ける砂のしめりや走り梅雨
勝つて呑み負けてあふりて生ビール
どよめきに駆りたてられるダービー馬

  千恵子
消しゴムの一角汚れ五月尽
頭に一花のせ仙人掌の律儀かな
ダービーや疾駆の馬身輝ける
走り梅雨外れ馬券を山にして
ビール飲む女の口に泡の髭

  利孟
仙人掌の鉢に並べて部屋の鍵
筒鳥や門扉に掛ける南京錠
一口は縁を拭ひてビアジョッキ
ダービーのゴールし鞭を振りかざす
拾ひては埋めるターフ走り梅雨

  正
一夜妻ならぬサボテン一夜花
畳屋の硝子戸閉める走り梅雨
三ツ星のシャトーホテルの薔薇の門
ダービーのいつも気になる空模様
雲の湧くごとく泡立ち生ビール

  箏円
はなを切るダービーの馬の大鼻孔
歯のすき間までを満たしてよきビール
睡蓮の池に老女の水棹かな
醜女なるこのサボテンも花咲けり
生業の水路消えしも生ふ真菰

  美穂子
検診を了へし坂道走り梅雨
ボサノバの地を這ふリズム花覇王樹
地ビールを遺影に長き友等の夜
夏衣母にもありし恋心
ダービーのスターに熱き声の波

  翠月
夜のビール話はあとの喉仏
ダービーの喚声の渦紙の渦
サボテンの花不気味な色の夜の静寂
夕焼けや優しき声の童唄
湯けむりの上下に流れ走り梅雨
 比呂史
大穴の馬場の重たく走り梅雨
細やかに紅を散らして京鹿子
ダービーのゲート出されて雨降れり
固き泡立てて備前のビアジョッキ
さぼてんの水分満ちて花開く