172回原宿句会
平成15年10月9日

   
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  美穂子
源流を辿りて甲斐へ蛇笏の忌
衣被ついつい秘密零しけり
湖凪ぎて月の欠片はまた月に
吊り橋の定員一人葛の花
先に子の釣れて自慢の鯊日和

  白美
寝転がり見る遠富士や蛇笏の忌
新月や破婚の咎は吾になし
隠棲の親王の裔葛の花
衣被女将に自慢の息子居て
鯊の群去つて釣り客大あくび

  利孟
鯊を釣る利根に傾く水平線
緩みたる眼鏡の蔓や蛇笏の忌
秋の日にかざして重ね塗る漆
朝市の鐘で開店秋なすび
萩の花セルフ給油は声頼み

  箏円
杉板の香る脱衣所葛の花
淑やかに箸より逃がれ衣被
蛇笏忌や山を突つ切るリニアカー
子を成さず見送るばかり秋時雨
きりぎりす鏡の中につくる笑み

  希覯子
ふるさとは墓と山林蛇笏の忌
身に入むや人間魚雷雨曝し
三番瀬残りて鯊の漁場となる
衣被益子の皿がよく似合ふ
葛の花蔓引き寄せて示しけり

  千恵子
よくもまあ小粒を揃へ衣被
名の知れぬ大樹を仰ぎ蛇笏の忌
屋根渡猫満月に尾を立てる
昼灯す高層ビルや鯊日和
雨の打つ葉群に立ちて葛の花

  和博
廃校のフェンスに沿ひて葛の花
裏富士に当たる朝日や蛇笏の忌
峻嶺や小鉢に残る衣被
公認の大道芸人秋麗ら
好天や鯊甘露煮の匂ひして

  翠月
蛇笏忌や絆の深き杣暮し
母譲りまづ持て成しの衣被
昼過ぎの潮音に鯊の釣り支度
夕月の庵の屋根や葛の花
鳥声の小さく梢に十三夜

  正
蛇笏忌や連山の嶺澄みわたり
深川に残る船宿鯊の秋
むらきもの心澄みけり秋彼岸
信玄の隠し湯までの葛の花
突出しと女将すすめる衣被
 比呂史
遊ぶ子をいつしか囲ひ虫の声
たわいなき夫婦の会話葛の花
三本の指を吸ふかに衣かつぎ
山々の気を一身に蛇笏の忌
砂浜に目より引き上げ鯊を釣る