第173回原宿句会
平成15年11月4日

   
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  希覯子
秋時雨窓一つなき美術館
茶の花や保健婦さんは話好き
神迎へ銅板葺きの新社殿
乾鮭や吊されしまま削らるる
霧の夜や厨の明かり紐で消す

  白美
乾鮭や徳利の底のよき温み
膳運ぶ音賑はしき神迎へ
笊に柿入れて戻すや峡の家
声伝ふ宿の在かや霧の夜
茶の花や托鉢僧の戻る庵

  千恵子
乾鮭の眼に残る湿りかな
消えながら犬ついてくる霧の道
神迎へ裏でチ矮鶏飼ふ神社かな
封緘に猫のシールや秋惜しむ
喪の家の茶の花垣や昼の月

  美穂子
茶の花や一服を謝し郵便夫
酒振りて乾鮭に海呼び戻す
さきがけの風の鎮まり神迎ふ
歩き初む子の靴に鈴小六月

  箏円
霧流れワイパー軋む音ばかり
巻き戻ししてみたき年神迎へ
干し鮭の肩のちから抜けきらず
北窓を塞ぎても入る鶏の声
部活終え下校の道のお茶の花

  和博
看護さることまた楽し蕪食ぶ
やうおかえり闇に声掛く神迎へ
茶の花や沼津小町の黄八丈
乾鮭や血液検査の日となりぬ
夕霧や車窓に滲む街明り

  利孟
乾鮭や奥丸見えの武家屋敷
柞降る月山羽黒湯殿の碑
竹皮に流す羊羹お茶の花
天かすに葱の素うどん神迎へ
霧の夜のにじみて影の失せし町

  翠月
金髪の巫女の加はる神迎え
街の灯を点しては消し霧流る
デパートに乾鮭を売る秋田弁
灯台の白くそびゆやカンナ燃ゆ
茶の花や姉の残せし赤襷

 比呂史
透明な静寂のなかにお茶の花
干鮭の吊られて腹の無一物
集落にそれぞれの神迎へをり
七五三果てて飛び出す御籤の児
ゆつたりと厚みを湛へ霧下りる