石神井公園吟行 |
東 人 ゆるめゆく巻き葉の火照り未草 綿アメをつつくをんどり木下闇 ひと口は匙を使はずかき氷 鷭の子の水脈のすぐ閉づにごりかな 河骨やボートの櫂の空まわり 梅雨晴や箸でくづして食ふむすび 睡蓮の吹かれて開くごと吹かれ 英 樹 草笛のなかなか鳴らぬ二人かな 万緑や子犬にもある歩き癖 一呼吸置いて向き変ふ水すまし ラジコンの船に驚くかいつぶり 炎昼や招き猫にも金の髭 とうすみの浮き葉に交み流れけり かたまりて水面に灯る半夏生 利 孟 葉を渡り終へ鷭の子の泳ぎけり 掘抜きの水の自慢や心太 白タオル帽子に垂らすボート番 魚釣のバケツに掬う水馬 一声を掛け舟寄せしボート番 三尺寝ラジオの鳴らす歌謡曲 落城の碑の美文調行々子 |
千 恵 子 睡蓮のかたよる池に雲流る 翡翆の行方追ふ目に青にじむ よしきりの声するあたりにカメラ置く 魚釣りを禁ずる看板未草 緑蔭のベンチに弁当置かれをり ラジオ鳴るベンチに昼寝の男かな 釣り上げし鯉測る子や梅雨晴間 京 子 鷭の子の浮巣に細き脚をかけ をさな児の髪に差したし花式部 蓮池に塑像のごとし白き猫 鬼面のサンダルおどす蟻の列 大車輪アヒルボートの一直線 七夕の笹を護衛のコリー犬 森をゆく紅の帽子と残り鴨 白 美 射干や泥を払ひて碑文読む 水草の巻葉踏みしく鷭の脚 白蒸気吐く模型船竹煮草 沼縁に白猫の立ち未草 金杓杭につるされ花菖蒲 姫女苑ボール蹴る子の黒き足 昼顔や鎌首のごと蔓延ばし |
詩 乃 甲冑の音や古城の木下闇 初吟行刻々急性脚気哉 水盤に活けしがごとき紅水蓮 犬舐めしまろび寝の子の足の蟻 河骨の葉の艶やかさ盃に欲し |