第40回原宿句会
平成5年7月4日 氷川台土田京子邸

   
    石神井公園吟行



            東 人
ゆるめゆく巻き葉の火照り未草
綿アメをつつくをんどり木下闇
ひと口は匙を使はずかき氷
鷭の子の水脈のすぐ閉づにごりかな
河骨やボートの櫂の空まわり
梅雨晴や箸でくづして食ふむすび
睡蓮の吹かれて開くごと吹かれ

            英 樹
草笛のなかなか鳴らぬ二人かな
万緑や子犬にもある歩き癖
一呼吸置いて向き変ふ水すまし
ラジコンの船に驚くかいつぶり
炎昼や招き猫にも金の髭
とうすみの浮き葉に交み流れけり
かたまりて水面に灯る半夏生

            利 孟
葉を渡り終へ鷭の子の泳ぎけり
掘抜きの水の自慢や心太
白タオル帽子に垂らすボート番
魚釣のバケツに掬う水馬
一声を掛け舟寄せしボート番
三尺寝ラジオの鳴らす歌謡曲
落城の碑の美文調行々子

            千 恵 子
睡蓮のかたよる池に雲流る
翡翆の行方追ふ目に青にじむ
よしきりの声するあたりにカメラ置く
魚釣りを禁ずる看板未草
緑蔭のベンチに弁当置かれをり
ラジオ鳴るベンチに昼寝の男かな
釣り上げし鯉測る子や梅雨晴間

            京 子
鷭の子の浮巣に細き脚をかけ
をさな児の髪に差したし花式部
蓮池に塑像のごとし白き猫
鬼面のサンダルおどす蟻の列
大車輪アヒルボートの一直線
七夕の笹を護衛のコリー犬
森をゆく紅の帽子と残り鴨

            白 美
射干や泥を払ひて碑文読む
水草の巻葉踏みしく鷭の脚
白蒸気吐く模型船竹煮草
沼縁に白猫の立ち未草
金杓杭につるされ花菖蒲
姫女苑ボール蹴る子の黒き足
昼顔や鎌首のごと蔓延ばし

            詩 乃
甲冑の音や古城の木下闇
初吟行刻々急性脚気哉
水盤に活けしがごとき紅水蓮
犬舐めしまろび寝の子の足の蟻
河骨の葉の艶やかさ盃に欲し