第58回原宿句会
平成6年7月22日

   
森利孟栃木県へ栄転祝賀句会
兼題 避暑 かき氷 熱帯魚
席題 蝉


            東    人
パンドラの箱ひらくごと蝉のこゑ
少年は風に手を振り避暑の駅
ストローでつくる峰谷かき氷
鰭立てて花の盛りの熱帯魚

            利    孟
避暑小屋を開け玄関の点検表
空蝉や手足動かぬ手術台
浮き沈みして瓶詰めの熱帯魚
かき屑の透き積りたる氷水

            梅    艸
手枕や午睡一刻釈迦の避暑
静謐に夜あらしめて熱帯魚
アクリルの千尋の海や熱帯魚
氷水いちごの赤の赤きかな

            希 覯 子
空蝉や踏み出す構へそのままに
避暑の宿生ひ立ち惹かる誓子傳
水槽を叩き闘魚に物を言ふ
凹凸の容器に馴染む削氷

            英    樹
避暑に来て買い出し班と決まりけり
乗り物の図鑑小脇に氷水
餌少し控へ目にして熱帯魚
根元まで舌赤く染め氷水

            京    子
避暑の宿ジャズセッションの遠音かな
蝉時雨五線の向うに鳴き止まず
熱帯魚群れつ離れつ尾はゆらり
夏氷白きを惜しみかき落とす

            法    弘
避暑地発サナトリウム行きのバス
情夫来ぬ夜は熱帯魚に指噛ます
氷水不幸めかして嘘一つ
蝉の穴真言立川流髑髏

            千 恵 子
匙を刺す場所の思案や氷水
寝呆け蝉一声鳴いて落ちにけり
闇に浮く水槽グッピー青光る
どの窓も開け放たれて避暑の宿

            白    美
避暑客の指這ふ駅の時刻表
バルコニー伸ばす背中に蝉時雨
氷水天辺掻きし錫の匙
白光に身を沈めたる熱帯魚

            美    子
蝉の樹に隣合はせの寝覚めかな
大皿に山と書きたる避暑の客
氷水啜り整ふ後頭部
切っ先の鋭き動き熱帯魚

            渡    海
初蝉の風の間に間にひそかなる
粗粒の数だけ光りかき氷
狭かれど天敵はなし熱帯魚
一年の荒れをあらため避暑の家

            浄
避暑期去り鎖引き摺る迷ひ犬
氷水一匙舐めて笑み溢る
熱帯魚暑さ寒さを知らんかな

            萩    宏
物言はぬぬけ殻つつむ蝉しぐれ
主居て空気生き生き夏館
デパートの屋上賑す熱帯魚
氷水額にあてて反省す