第69回原宿句会
平成7年5月2日

   
兼題 仏桑花 新茶 労働祭
席題 初鰹


            東 人
音たてて湯に縒りを解く新茶かな
鎌倉に禅寺多し初鰹
そのなかに犬に蹤く人労働祭
芯伸べて日の行方追ひ仏桑花

            白 美
骨太の指が捌きし初鰹
島民の睡れる真昼仏桑花
白薩摩に色を深めて新茶かな
公園の座を取り合ひて労働祭

            希 覯 子
鉢巻に威勢みなぎり初鰹
メーデーの列割り通す郵便車
走り茶や狭山の友の律儀なる
沖縄に慰霊の旅や仏桑花

            利 孟
メーデーや警官の手の区分地図
走りの茶おもむろに浮く台秤
身を支へはばたく蝶や仏桑花
雄雌の味の好みや初鰹

            京 子
新茶淹る母の好みの湯の加減
ハイビスカス飾り色濃きカクテール
メーデーの列に加はり乳母車


            千 里
眉太き神父の胸に仏桑花
七回忌思ひ思ひの新茶かな
メーデーや乙女の素顔赤みさす
ジーンズのお尻の位置に仏桑花

            伸 作
湯上りの男子すつくと初鰹
減給やメーデー遠くなりにけり
ハイビスカスつけてフラ舞ふ老人会


            美 子
新茶呑む年ごと脆くなる野心
風化する手配の写真仏桑花
メーデーや眉尻を濃く描き上げて
人心地つく初鰹買ひ終へて

            千 恵 子
仏桑花石垣続く島の家
初鰹質屋の妻の長電話
ごみ篭に烏群れゐる労働祭
新茶飲む不眠の夜の続く朝

            梅 艸
新茶まづ縒りの固きを愛でるかな
メーデーや移ろひしもの去らば去れ
メーデーや年に一度の「労働祭」


            玄 髪
送られし新茶をめでるたなごころ
若き日が脳裡をめぐる労働祭
白髭にむらさき染みて初鰹
わが部屋に月下美人の咲ける夜も

            法 弘
ハイビスカス挿しつつ嘘をつく女
新茶嗅ぐ鼻梁の脇のうす黒子
「二の腕の美子でござい」メーデーへ

            萩 宏
初鰹出刃を研ぐ背に酒一本
メーデーや日当替はりのサンドイッチ
珈琲をしばらく休む新茶かな
忍逢ふハイビスカスの映える宿