第70回原宿句会
平成7年6月23日

   
兼題 天道虫 海霧 青梅
席題 首


            東 人
別という名の駅つづき海霧深し
天瓜粉首の括れの胡麻をとる
天道虫星の数ほど恋をして
成り年のとりわけ赤き実梅かな

            千 恵 子
雨意ありて天道虫の動かざる
脱けさうで脱けぬ木偶首万太郎忌
海霧深し父の形見の旅鞄
昨日落ちしままに青梅色づけり

            健 次
てんと虫畳み損ねの薄羽見せ
首長去り都市博跡に西日射す
海霧ごしに手負ひの武者の影法師
淡々と地面にころげし青梅や

            希 覯 子
天道虫鎧に散らす紋所
海霧晴れて利尻の富士を目のあたり
籠に満つ実梅に葉つきありにけり
棟上げの首尾上々に梅雨晴れ間

            京 子
海霧をまつ毛にのせて父帰る
梅の実やどこにもゆるみのないまろさ
首置かぬマヌカンの着る花浴衣
天道虫飾りのピンに成りすます

            千 里
亡き人の姿を海霧に挙手の礼
海霧が出て島を丸ごと連れ去れり
実梅落つ龍角散の苦さかな
濡れまいぞ葉裏を傘に天道虫
背を向けしB型どうし青き梅

            美 子
実梅落つ夜討ちの記者の来る予感
幼子の爪切る縁に天道虫

            千 尋
梅の実やぐらりゆらりと瓶の底
青梅や大河小説「完」の文字
錆び釘のあたま避けゆくてんと虫

            白 美
海霧深し運河に滲む停泊灯
焼き上げし不揃ひの菓子てんと虫
首塚に訪ふ人のなし炎天下
目計りで瓶に転がす実梅かな

            伸 作
たち込める海霧汽笛さえのみこんで
ラムネ飲む音のなつかし壜の首
水滴をはじく青梅越しに虹
うたたねの汗ばむ首に天道虫

            法 弘
夏至の夜や乳首に銀のピアスして
出棺や葉裏へ回る天道虫
実梅洗ふ母の手首の輪ゴム跡
ここは横須賀KISSに濡れ海霧に濡れ

            博 道
海霧に射す灯に向けて櫂を漕ぐ
青梅の香に誘はれてひとかじり
襟首の長き髪あげ夏祭
手に留まる天道虫とひと休み

            武 甲
海霧や指令飛び交ふ操舵室
てんと虫帰宅せし子の襟にをり
短夜やハリファックスに首懸ける
落梅や隣家に伸びし去年の枝

            義 紀
香水や夢二の女首長く
青梅落つ小学生の一群に
左中間天道虫が飛び抜けり
この恋の行く末まるで海霧のごと

            ま り も
梅雨晴れに色変えたくなる犬の首輪