第４１回 平成１１年１０月２２日
利孟選投稿句会
時雨るるやにわかに暮れる船着場
裸婦像の乳張り給ふ小春の日
肩の手に手を重ねけり小望月
作小屋で農事の続く十二夜
片山栄機
ワインに灯赤く映りて小春かな
灰白くまとへる炭や秋刀魚焼く
碁を打ちに行く坂暗し秋時雨
綿入れの袖に手を入れ子のはしやぐ
川村清二
紅葉や唐紅といふことば
小春日や四肢を伸ばして猫眠る
高尾山いろは紅葉に足を止め
切り取つてカメラに写す秋模様
田中鴻
バス降りてしばし小春の桂浜
網こぼる魚にまつはり冬鴎
小春日の小川の水に魚の影
魚釣りや驟に襲ふ村時雨
お召車の菊の御紋や秋高し
落葉降る県庁堀の灯の赤し
満員のバス遣り過ごす秋桜
足音の先行後ゆき草紅葉
永松邦文
冬薔薇ポンヌフと言ふレストラン
城門の太き鎹片時雨
秋の蝶唱歌指導の庭越ゆる
鬼怒の瀬に群るる川鵜や杉風忌
仁平貢一
小夜時雨世界遺産の山毛欅太る
初時雨止みて明るき枝の先
小春日や丸く止まりし観覧車
川底の小石の揺れし小春の日
福田一構
手になじみはじめし竹刀小春かな
カンテラの見送る終車無月かな
信州に生まれし母の蕎麦談義
稲架あまた組まれし畦に余り藁
小春日や畝に双葉の出揃ひて
銀色の鳩のはばたく小春かな
行進の後ろ揃はぬ運動会
夕時雨砂場に母子の靴の跡
堀江良人
朝時雨ラッシュに街路灯ともる
猫の背に翡りの生まる小春かな
男体山の薙のあらはに天高し
岩肌を残し紅葉の山染める
三澤郁子
小春日のさしこむ明治の赤煉瓦
風出でて花野のいろを動かせり
一輛の貨車はなされて草紅葉
からまつの落葉時雨となりにけり