第54回 平成12年11月24日
アーバンしもつけ


福田一構
名刀に刃こぼれあまた村芝居
隧道を抜けて会津の紅葉山
天高しいよいよ太き孫のもも
小春日や忠霊塔に鳩一羽

片 山 栄 機
鉄塔の尖点々と冬の靄
とうとうと流れる川や鶴渡る
早退と娘の電話冬ざるる
年増えて白髪の増えし神無月

川村清 二
餌くれし人を忘れじ鶴渡る
掃き寄せて張り付くごとき柿落葉
落葉掻き巫女の掃く手の舞ふごとく
念入りに拝む社や神の留守

田中鴻
湿原や若鳥連れて鶴来たる
落としては鳥の群がる熟し柿
神無月一連残る稲架襖
長雨の歩道の落葉滑りけり

とこゐ 憲 巳
足利氏代々の墓鶴渡る
帯解きの二人付き添ふ太鼓橋
護符取りに来いや来いやの恵比須橋
篝火に交はす挨拶恵比須講

栃 木 昭 雄
鶴来しと回覧板の廻る村
留守の宮緋袴そぞろ歩きかな
初鶴は野鳥図鑑の扉から
鹿鳴きて山深々と眠りけり

永 松 邦 文
十五分待ちのたこ焼初時雨
生粋の野州女の干す大根
鉛筆をさくりと削り神無月
熱爛や去年のことはもう言はず

へんみ ともこ
鶴渡る茶畑越しに駿河湾
こぼれる種子を押さえつつ柚子絞る
井桁柄シャープ記号とも千蒲団
立冬や風に外れる蔓の先

堀江良人
さび色に染まる嶺嶺神無月
前線の雲の重なり鶴わたる
登校の子の鈴ひびき神無月
小夜更けて高き雨音神無月

三 澤 郁 子
湖のしんそこ蒼し神無月
夕暮れの空たひらかや鶴の声
神無月スタンプ逆さ押しにして
鶴渡るかなた夜明けの大雪山