第85回  平成15年7月27日

特選句は緑色太字で表示
特選句作者を巻頭に、 以下入選数で配列しています




栃木昭雄
山あげや将門天を跳び渡る
大賀蓮咲かせ男の顔の泥
天領を濡らし尽くして梅雨明ける

会田比呂
桑の実やけんけんで出す耳の水
震はせし糸に泣く木偶著莪の花

へんみともこ
桑の実や釘挿すだけの木戸の鍵
夏雲や傷に擦り込む草の汁

三澤郁子
聖堂の扉全開梅雨明ける
選り寄せて極上の繭輝けり


句会後暑気払いとなりましたが、まだ梅雨も明けないこととて
梅雨明け祈願の一杯会の趣、それでも、かように盛り上がっております


福田一構
梅雨寒や女闘士の口の闇
純白のシーツはためき梅雨明ける

田中鴻
梅雨明けや子の駆け行ける田圃道
桑の実を食べた証の唇の色

堀江良人
梅雨明けや影の重なる野路地蔵
廃園の桑の古木の実りかな

川島清子
擦り傷を唾でなだめて桑苺
羽ぶとんの膨らみ戻り梅雨の明け
紫陽花の萎えたる毬を剪り落とす




泉敬子
矮鶏遊ぶ里の茶店や桑いちご
塩薄き老舗の宿の鯛素麺
剣豪の小さな墓や木下闇

とこゐけんみ
山あげの将門の段梅雨寒し

標幸一
絹の里たりし荒畑桑実熟る
育ちゆくほどに眩しき雲の峰
風の波寄せては返し青簾

大塚登美子
桑の実や戦に散りし餓鬼大将
梅雨明けや塀に並べる洗ひ靴
桑の実や恩師の米寿告ぐ便り




大貫美代子
陣取りの陣の広がり苔青む
糸車繰る手やはらか桑いちご
鰐口の一打の軋み梅雨の明け

石塚信子
クレーンの腕の伸び切り梅雨の明け
人参の金魚が椀に夏料理
野生馬馳せる草原梅雨明くる

片山栄機
蠅たたき探しをる間に蠅失せる

柏崎芳子
老鶯の鳴けば葉騒の応へけり
天平の崩れし甍濃紫陽花
アカシヤの青葉川辺に日を散らす

森利孟
手づかみに胡瓜四五本行商婦
缶蹴られ虜散りぢり桑実る