第108回 平成17年10月16日
   昭雄
★吹き晴れて猪のぬた場の泥濁る
 吊橋の宙への百歩紅葉渓

   信子
 明日にも裂ける気配の夕石榴
 雨音に誘はれ眠る秋夜かな
 猪猟師八溝山系知り尽くす
 夕紅葉癌病棟の窓染めて

   ともこ
 さざなみに崩る稜線秋の湖
 廃線のレールの温み蝗飛ぶ
 ひとつ出てやがて二つに秋の蝶

   比呂
 稲光り出土の俑は子を宿し
 錆た鮎数の足らざる簗草履
 魚篭揺らすほどに跳ねては紅葉鮎

   芳子
 灯台の影まで染めて秋夕焼け
 船宿の女将大声鯊日和
 紅葉濃し嶽の極みの照り映えて

   良人
 猪狩りの勢子に指差し猪の道
 瀬の音のもみじ帳を透かし来る
 噴煙の風にちぎれてもみじ燃ゆ

   一構
 長雨の上がる朝や金木犀
 紅葉谷水くれなゐに岩ばしる

   紀子
 園児らに汽笛優しく刈田道
 尾根越ゆる雲の切れぎれ草紅葉

   永子
 荻吹くや岸に数多の舫ひ杭
 早口に有線放送猪出しと

   幸子
 雨煙る間引菜の根の泥雫
 猪の鍋囲み猟師の法螺話

   鴻
 猪鍋や孫の自慢のクラス会
 湯の宿を囲ひ夕日の紅葉山

   清子
 秋深し埴輪の馬の目のうつろ
 黄葉冷えしてアカシアの北の町

   敬子
 手びねりの壷に昇竜照紅葉
 路地になほ残る黒兵衛次郎柿

   聖子
 青空に満ち秋薔薇の香りかな
 岩頭に鷺の見下ろす崩れ簗

   登美子
 ゴンドラの紅葉浄土の中へかな
 同室は喧嘩友達紅葉狩り

   ミヨ
 高原の風からめてはけらつつき
 那須岳や隈なき風のななかまど

   利孟
 熟れし木の前にテントのりんご園
 衣に色移す明るさ紅葉谷
 サーキットまでの野の道秋暑し