第110回 平成17年12月11日



  比呂
★里神楽神の衣装で食ふ饂飩
★素戔嗚尊も蛇も千鳥足里神楽
・兜煮の鮪たちまち盲いたり
・持ち上げて煤払はるる童子仏
 しつけ糸紅絹もて束ね一葉忌

  芳子
★大仏に掛けたる梯子煤払
○枯野吹く風も枯れ色番屋跡
・卵搭の落葉隠れの御堂裏
 短日やポストへの道小走りに
 鮪船帰航に広がる茜雲

  信子
★鮪糶る声朝市を貫ける
・照り映えし紅葉幾重に京の寺
 参磴に千の息継ぐ紅葉寺
 手かざして駆け入る軒や初時雨
 蔵座敷つるべ落としに窓暮るる

  永子
★大鈴の鈍き音立て煤払ひ
 的前に踏める凍て土紺袴
 運ばるる鮪の巨体競り上げて
 木枯しの渦巻く路地の陶狐
 磴先に御座を示して神の旅

  美代子
○飛来池の水を揉み合ひ鴨の群
・大鮪の切り口さらし糶をまつ
・立て掛けし材に烙印冬日かな
・すす掃きて後の火伏せの御札かな
・蔵隅に醂し澁柿まどろめり

  昭雄
○自販機のつり銭ころげ冬隣り
・煤払ひ鬼門に貼りし神の札
・鮪追ふ漢や南緯四十度
・仏壇の仏追ひ出し煤払ひ
・凍鮪鈎で滑らせ競り落とす

  ともこ
○木の葉散る追分団子に笹の皿
○鮪競る手鈎巧みに捌きては
・おんぶせる肩より垂れて千とせあめ
 霜の声山裾の灯のまたたけり
 キャンドルの炎の揺らぎ聖夜かな

  良人
○煤払ふ笹音こもる堂の内
・奥能登の湯宿の窓を打つ霰
・雲脚のせはし能登沖鰤起こし
 煤払ふ姉さんかぶりの若僧徒
 蛍光の灯に染まず鮪鮨

  幸子
○手探りに鴨居の底の煤払ひ
・白菜漬ける株のすはりを確かめて
・声高に男競り合ふ鮪かな
 黙し行く靴音固し寒月光
 古き世の絵物語の菊人形

  敬子
○先づ位牌清め仏間の煤払
・小春日や味噌蔵のジャズコンサート
 学校祭焼芋売りの赤襷
 背伸びして鮪船待つ女衆
 大漁旗靡く帰港の鮪船

  清子
・小春日を鏝で押さへて老左官
・舟盛りに鮪づくしや波の音
・幾百の鳥語も途絶え葦刈らる
 木の葉かと思ひし雀翻る
 ともかくも背筋伸ばして煤払ひ

  聖子
○解体の袖捲り上げ鮪売り
 給料日回転寿しの鮪かな
 町興しクレーンで吊る本鮪
 日の差せば舞ひ降りて来る煤払ひ
 煤払ひなごりの煤が又落ちる

   紀子
 誰の手も届かぬ高さ冬薔薇
 煤払ふふるさと遠き仮寓なり
 裸木や恐れしものの無かりけり
 頬に触る空気の尖る十二月
 里山に白銀迫る年の煤

   登美子
 四十年住めばふるさと根深汁
 おでん鍋膝組みかへて杉の箸
 亡き父の好きな鮪と熱き粥
 旅で会ふ下仁田葱の白さかな
 煤払ひ済みて明るき障子かな

   鴻
 煤払ひされて輝く仏達
 鳥遊び蔕のみ残る柿暖簾
 郷里の薮を飾りし烏瓜
 隅々を拭きて車の煤払ひ
 農作業一段落して鮪寿司

   一構
 公園に孫を追ひ出しすす払ひ
 紅葉の見頃を映す水面かな
 早朝に赤飯届く七五三
 黄金の涙のごとく銀杏散る
 納会の剣士総出の煤払ひ

   利孟
 一皮は枯れ色冬菜畑かな
 狐火や心張り棒で支ふ裏戸
 寒月の糸の細さに沈みけり
 煤竹に紙垂して社払ひけり
 船霊に御神酒と盛塩鮪船