第111回 
平成18年月1月22日

     比呂
★ 榾崩れ話佳境に入らんとす
◎ 寒風や火を吐くごとく馬の息
◎ 七草を囃す俎板弾ませて
・ 福引や子に託したる福の神
・ 臼を出て餅丸くにも四角にも

     芳子
★ 福引や一際高く当り鐘
◎ 風孕みいや高々とどんどの火
・ 風をけり一声高く初鴉
・ 若水の手桶に映る日の光
・ 筑波嶺の先づ高みより初茜

     昭雄
★ 赤褌駆けて若潮迎へかな
◎ 天心の月を焦がしてどんどの火
・ 指撓る詰めの一手や初将棋
・ 福を引く傘寿の媼紅ひきて
・ 寒風を切り裂き「面」といふ気合
     美代子
◎ 大凧の武者絵山並跨ぐかな
・ 寒牡丹遅る蕾に息かけて
・ 若水を汲めば残りし星消えて
・ 根の太き冬芹刻む朝の膳
・ 鉄瓶の湯の音響き去年今年

     永子
・ 里の荷を解けば牡蠣の香の満ちて
・ 尺八を浚へば和して虎落笛
・ かまくらや湯宿の玻璃の仄明かり
・ 声からし呼ばひ福引大当り
・ 豊かなる水脈深き若井かな

     幸子
◎ かけ声を合はせて夫婦鍬始め
・ 床の間に届きし朝日鏡餅
・ こなされて米寿の母の食む雑煮
・ 両の手に二つの手桶若井汲む
  福引や鐘や太鼓に客数多
     憲巳
◎ 若水に南部鉄瓶鳴りひそむ
・ 牡丹鍋掛けて納まる自在鉤
・ 湯豆腐の煮立ちたちまち箸の出て
  体脂肪減らぬジョギング去年今年
  福引や一人抜きたし譲りたし

     良人
・ 牡蠣売りの売りの舌訛む声や風の岬
・ 福引の当りを知らせ鈴の音
・ 高尾山より富士遥拝の初詣
・ 初詣護摩の火の舞ふ堂の内
  若水を汲む手紅さす明かり先

     ともこ
◎ 若水や糊の利きたる割烹着
・ 北風に背を向け列のバスを待つ
  墨付けの墨迸り太子祭
  三角の角の擽る笑籤
     登美子
・ ストーブの火を確かめて鍵当番
・ 福引の空籤に賜ぶ延寿箸
・ 若水を汲むや鶏鳴起こりけり
・ 霧吹きて蕾の膨る福寿草
・ 揺れ交はす細き枝みな冬芽満つ
  襟巻きに肩を包みてめぐる花舗

     聖子
◎ 若水の湯気の向かうの朝日かな
・ 振袖の福引く顔の幼かり
・ 成人を祝ひ母郷の魚届く
  寄り道や臘梅の香に誘はれて
  締め切りの迫り震へる寒の入り

     清子
◎ 大吉のみくじ春着の懐に
・ ボロ市や寅さん真似て啖呵売
・ 若井汲む世相の変り遠くして
  艶めきて戀遠からじ炬燵猫
  福引や特賞に子は跳びはねる
     鴻
・ 若水や釣瓶に汲みし今年かな
・ 若水を汲み湧水にすすぐ口
・ 泣き笑ひ追ふ子追はる子雪合戦
・ 貝独楽を教へて遊ぶ大人たち
  福引や特賞当ててえびす顔

     信子
・ 初雪の降り初む昼の街灯り
・ 雨脚を払ひどんどの焔立つ
・ どんど火を煽りにあふり果てにけり
  裸木の桜の捩じる胴太し
  大仰に鐘振り鳴らす福引会

     敬子
◎ 若水を汲む裏山の祠神
・ 軒氷柱地に突き刺さるまで伸びて
  手品師の仕掛けを落とし初笑ひ
  福引のお亀火男客招く
  酒蔵に朱盃を添へて松飾り
     一構
・ 笠雲を照らし筑波嶺初茜
・ 凩に背中押されて縄暖簾
・ 良く動く嬰のまなこや淑気満つ
  先達のひとり欠けたる初稽古
  霜柱孫と二人で踏んでみる

     石田
・ 陽の射して若水の面白々と
・ 若水や斎みし漢の白袴
・ 冬晴や橋吊り上げてくぐる船
  突堤の光蒐めて春の駒
  福引や攫む方位の裏鬼門

     利孟
  御降りや屋号法被に下足番
  福引や朱書きのビラにある吾が名
  ピラカンサバイクのメッキ磨き立て
  若水や去年の湿りの釣瓶繩
  寒晴や発電風車ゆつくりと



       
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