第115回 平成18年月5月14日
天平が丘吟行 

   登美子
★ たんぽぽや礎石小さき国分尼寺
◎ 防人の人恋ふ歌や青葉闇
・ 尼寺の跡四方新樹の青の中
・ 天平の丘の野点や新樹光
・ 母の日のブルーの指輪ゆるみけり
・ 春惜しむ金の鎖のネックレス
  空堀の乾ききりたる新樹光

   昭雄
★ 草笛を草の香踊るかな
◎ 筧にて水引く厨国分尼寺
・ 藤の花野点の碗に香のこもる
・ 天平の丘を明るめ楠若葉
・ 国分寺の走り根太き朴の花

   芳子
◎ 緑陰に角の欠けたる供養搭
◎ 尼寺跡を囲みて新樹風拡ぐ
◎ 風薫る中に野点の緋毛氈
◎ 藤の房映す水面を渡る橋
◎ 谺呼ぶ新緑に手を叩きをり
   信子
◎ 万の木の若葉は空を押し上げて
◎ 若き木は若き色して藤の房
◎ 万緑下緋の翳落とす野点傘
・ いにしへの尼寺の跡繍毬花
・ 若葉風甘さをふふむ野点菓子
・ うぐひすの一語や次の一語待つ
・ 古墳群を示す大地図麦は穂に

   比呂
◎ ぎしぎしや歩ごとに湿る隠れ径
◎ 野の墓の報謝の小石花うばら
◎ 若楓旅で賜る野点の茶
・ 山法師の枝を光らせ昨夜の雨
・ 手を搏ては森の木霊す八重葎
・ 陵の端へと迫り麦畑
  風掴み損ねて泛び豆の蔓

   永子
◎ 玉砂利を濡らし社に余花の雨
・ 藤の房揺れれば光る水面かな
・ 墓碑搭につづく細道青葉闇
・ 芍薬の花の明りの照らす墓
・ 上り鮎藻の香放ちて跳ねにけり
・ 麦の秋線路軋ませ電車過ぐ
  新緑を車窓に映し九十九折
   ともこ
◎ 木暗さの中の四阿桜の実
◎ 万葉の草木の苑や椎落葉
◎ みどりさす長き縁側民家園
・ 葉桜や閉ざされ箱となる露店
  こぼれたるものを拾ひて青実梅

   幸子
◎ 葉桜や野外舞台に人の無く
・ 揚げ雲雀防人辿り行きし径
・ 野点傘五月の空にちぎれ雲
・ 田植ゑせる子供の靴の泥雫
・ 温顔の植田を巡る老農夫
  雨上がり新緑映えて鳥騒ぐ
  母の日に届く花束鮮やかに

   良人
◎ 枝の末に蘂を残して散るつつじ
・ 緑さす式部の墓や烏鳴く
・ 初夏の陽射しを閉ざす木下行く
・ 日差し得てあやめ色濃く咲きにけり
  楓の実の落ち居て海胆の群れる如
   美代子
◎ 雨しきる土塁の緩み一輪草
・ 天平の土器の破片や著莪の花
  草笛や天平が丘をわたる風
  野州路や壬生の追分麦の秋
  水玉の散りし滝の辺木の芽引く

   敬子
・ 糠床の馴染みよろしき暮の春
・ 道すがら聞こゆる初音金婚日
・ 玉をとく牡丹や母の忌を修す
  見はるかす遠嶺きりりと鳥帰る
  座禅草紫衣の水辺に無想かな

  
・ 若葉濃し胃の腑に落ちる野点の茶
・ 天平の丘の新樹に芭蕉の句
・ 初夏の風天平の丘の径
   利孟
  国分尼寺跡なる畑揚雲雀
  防人の郷の土塁やつつじ燃ゆ
  筑波へと流れる雲や桐の花
  防人の径行き止まる水田かな
  青実梅茶筌十字に打つ野点