第114回 平成18年月4月16日
   ともこ
★ 長閑しや雲のしつぽを雲が追ひ
★ 狛犬の喉を潤し花の雨
◎ 穀雨かな軍手に黒き油染み
・ 石の扉の城主の墓や馬酔木咲く
  捜しゐる眼鏡頭に万愚節

   昭雄
★ 四月馬鹿手押しポンプの掠れ音
・ 眼が語るパントマイムや四月馬鹿
・ 水切りの石良く滑る春の川
  穀雨の棚田耕運機胴震ひ
  浄土かな穀雨しろがね走りけり

   比呂
★ 算盤の始めご破算四月馬鹿
・ トラックで来しが鳴き合ひ牧開き
  すぐ眠る母に穀雨の風微温し
  人声に負け散り急ぐ桜かな
  ほとびたる沈丁花に闇膨らめる
   清子
◎ 馬鹿のつく本よく売れる四月馬鹿
◎ 花吹雪風より水に乗り移る
・ 夜桜や人盛り上る太鼓橋
・ 畑打ちのまづ犬繋ぐ杭打ちて
  水牛も人も精出す穀雨かな

   敬子
◎ 難聴と言へど多弁や花辛夷
・ カルテには美人と書かれ四月馬鹿
・ 回転扉押せば朧に港の灯
・ 山茱萸の花ほつほつと異人館
・ 穀雨の日柄より磨きて鍬手入れ

   聖子
◎ 石垣の崩れの青む穀雨かな
・ 大き目の背広と靴と入学す
・ 干し物に残りししめり穀雨かな
・ 鐘の音の風にもつるや花吹雪
・ 万愚節路地の諍ひ聞き流す
   信子
◎ 有りたけの鉛筆削り鳥雲に
・ こでまりの風を遊ばす川辺かな
・ 鏡中に掃きし頬紅四月馬鹿
・ 潔く落ちて眩しき紅椿
・ 再会のグラス打ち合ふ春の宵

   美代子
◎ 金次郎の読本捲る桜まじ
・ 穀雨かな暦に農事目白押し
・ あかあかと空奪ひ合ふ夕桜
・ 巣鴉の樵人のごとく枝打ちす
・ 山奥に霞のつなぐ大伽藍

   芳子
◎ 土手膨る程に咲き満つ芝桜
・ 尾鰭つきふくるる話万愚節
・ 地を均し畝をしとねの穀雨かな
・ 啓蟄や黄ばみし系図繙いて
・ 春風や遊び疲れておんぶの子
   一構
・ 霾やかつて谷中村の殉難碑
・ 再建のなりし城垣揚げ雲雀
・ 葦原に風を誘へる野焼きかな
・ 葦原に太き火柱野火吼る
  花万朶古木を囲む車椅子

   幸子
◎ 春色をほどよく配し手巻き寿し
・ かつがれてゐたる間の幸四月馬鹿
・ 開墾の夫婦語りて穀雨かな
  闇のごと行く手を阻む春嵐
  夜桜に雪洞灯す宴かな

   永子
◎ 古墳へと淡き木洩れ日春の泥
・ 船を追ふ鴎ねぐらの島桜
・ 糸桜古りゆく堂の屋根覆ふ
  生真面目な人をかつげぬ四月馬鹿
  種動き穀雨吸ひ込む畑の土
  
・ 説明を聞かずに迷ひ四月馬鹿
・ 菜の花の香りの続く夜道かな
・ 花吹雪微笑み立てる石仏
  花曇り微酔ひ歩く会社員
  良く育つ家庭菜園穀雨かな

   良人
・ 緋桃咲く庭に野点の緋毛氈
・ 朧月昇るや一人酔ふほどに
・ 人前も無き鳩の恋万愚節
  鶏鳴の輪たる里巷に穀雨かな
  穀雨かな風に馴染みし樹々の枝

   登美子
・ 鉢に置く肥料ぬれゆく穀雨かな
・ バンザイし眠る腕白穀雨かな
・ 春宵や病後のうすき爪を剪る
  牡丹の芽青き宝珠のごと育つ
  穀雨かな雀色糸運び来て
   利孟
  栃芽吹く若木大樹に魁て
  路地奥のバーにともる灯穀雨かな
  前掛けを濡れ手で探り浅蜊売り
  少年の甲高き声草萌ゆる
  栓ゆるめ注ぐ樽酒花の雨