第126回 那須町吟行 平成19年4月15日
・遊行柳  ・芦野城址  ・伊王野城址

   幸子
・ 種薯の切り口黒き灰化粧
△ 鶏鳴や日ごと膨るる春の土
・ 屏風絵は元禄絵巻花の宴
△ 渓の花吹き上げ千の風のゆく
★ 風喰らひ疲れ知らずの鯉のぼり△

   敬子
・ 風光る岸に引波打ち寄せて
  桜鱒網に花やぐ婚姻色
  柴垣も一点景や木の芽和
△ 春愁やタンクローリー温泉を売りに
△ 結願や桜万朶の善光寺

   永子
△ 産土の神の小鈴や花青木
△ ごとごとと春の光を掬む水車
・ 老いもまた担ぎ鎮守の春神輿
・ 祠守る杜に紅さす薮椿
  里山の春の匂ひを吸ひ込みし
△ 山桜幾年座する石仏
  北の街遅れて届く春便り
・ 狛犬の背にまづ落ち薮椿
  遊行柳口一杯の投句箱
・ 城址の桜を風の吹き上げて
   美代
  春耕や遊行柳のゆるゆると
・ 石仏の台座さはがせ分かれ蜂
  蜂の群石の透き間の空念仏
・ 山越える八溝の風や遅さくら
  手秤の分葱をもとめ奥会津

   芳子
  きざはしを踏み登り行き春竜胆
△ 幾そたび花を見てきし川灯台
  頬寄する風を抱きて薮椿
  母衣掛けしほどに広がり山桜
・ 四阿に携帯電話柏餅
・ 春大祭軽き神輿の過疎の村
  残雪の那須の裾野に広がる田
  訛りある茶屋の女将や菫菜
・ 朽ちかけし古木の桜咲き満ちる
  敷き詰める畦の毛氈芝桜

   清子
△ 粽買ふ母の遺影も数に入れ
  いとけなき早苗はじつと耐ゑ育つ
  黄の色も老もゆたかに濃山吹
・ 百千鳥鼻孔にとどく牛の舌
  野の新樹鏡のごとき小沼かな
   清二
  振り返り先に進まず桜道
  風に舞ふ花の一片春光る
  風のまま流れて雲の春の風
  野仏や座してねむたく春の風
  後ろ髪引かれて進まず桜道
  道の駅桜巡りの客多し
・ 隣田に枝を映して桜かな
  野仏も風のの祈りに頼る春
  野仏もなんと眠たし山笑ふ
△ 春の空独り占めして五月鯉

  
・ 箱根路やバス降り撮す雪の富士
・ 残雪の富士見霽(みはる)かす駿河湾
  菜種梅雨田圃一面黄絨毯
・ 木の芽晴箱根の山にバスの列
  角落ちて庚申山の鹿哀れ

   憲巳
  田を植ゑるまで楽しみて桜かな
  旧跡の柳に負けじ桜かな
・ 菜の花や日は中天に東山道
  古城跡に残りし古木桜かな
  花咲きて川灯台のそのままに
△ 芽柳のゆるりとゆれてやつれ句碑
  耕人の一人ふたり東山道
・ 団塊の世代かふたり草を摘む
・ 名木に人寄す脇に畑打てる
・ 駐在は吾が教へ子春祭り
   昭雄
△ 春風や石狐に赤のよだれかけ
  湯煙の風と遊べる柳かな
  資料館つつむ明るさ花明かり
  雪嶺の近き芦野に芭蕉句碑
  芭蕉碑の空けさがけに初燕
・ 風生れて柳青める芦野かな
・ 城下町にうなぎの暖簾蔵座敷
  囀りの城山に座す馬力神
  はせおの碑容れて花散る芦野かな
  築城の記念樹の槙芽吹き急

   ともこ
・ 翔つ鳥の枝の弾みの落花かな
  野の風に揺れつづけをり二輪草
  浚ひたる泥肩傍らに蓬生ふ
△ 手の窪に日向のにおひ花の種△
・ 谷折りの紙に小分けの花の種
・ 初燕細くて長い路地の空
・ 胸に咲く刺繍の野ばら春セーター
  暖かや卓袱台の脚立ち上がり
  クマチスの強き産毛の蕾かな
・ 絶え間なく響く水音山笑ふ

   良人
  水の田に雪降る如く桜散る
△ 水の音風音那須の春動く△
・ 花冷えにかくも気勢の花の宴
  人集ふ開花間近の古樹桜
・ 村口の蕎麦屋品切れ花見時
   聖子
・ 山畑に香を重ね合ひ桃の花
△ 笹舟も乗せて川面の花筏
  風たちて肩に一片桜の夜
  日の射して淡き光の朝桜
・ こんなにも山蒼きとは春の空

   比呂
  春雨を吸ひ尽したる山毛欅林
  矢印のみぎ池ひだり糸桜
  老鶏のかたみに鳴ける花の昼
  脱いでよりしみじみ見たる花衣
  ふいに来て泊る酔客花菜漬

   利孟
  城山の犬追ひ馬場や犬ふぐり
  白河へあと四里余町燕来る
  城山のくづれし土塁落椿
  風を呑むほどに尾の跳ね鯉幟
  垣に尾をかけてひと息鯉幟
  芽柳や遊行の僧のいづくへと
  芽柳や湯の出ぬ里に温泉の社