第127回 平成19年5月20日
兼題 水羊羹 夏場所
     比呂
★ 映りたる空に植ゑ込む早苗かな
  田一枚植ゑて拭ひし顔の泥
  五月場所髷なきが負ふ明荷かな
  田植唄神を称へて風に乗る
  水羊羹さて難題は置いておき

     永子
・ 舳先上げ帰る釣り船夏めきぬ
△ 声高に集ふ農夫の堀浚へ
・ 朝焼けを背負ひ大樹の影絵めく
・ 髷を結ふ髪の伸びずに五月場所
・ 唇に残りししめり水羊羹

     昭雄
  夏場所や行司の鞐金踊る
・ 久闊を叙すも一息水羊羹
△ 夏場所やきりりと結ぶ名古屋帯
・ 紙のせて辿る写経や水羊羹
・ 添えられし黒文字太き水羊羹
     ともこ
・ 抜き出してほのと竹の香水羊羹
・ 初夏の風櫓太鼓の音運ぶ
△ 賑はひは駅よりつづき五月場所
  大小のすり傷膝に苜蓿
・ 緑さす沓脱ぎ石に日和下駄

     良人
・ 銀色に機影が浮かぶ五月空
・ 触れ太鼓み空貫らぬく五月場所
  鬢付けの香りの気配五月場所
  水羊羹有りと老舗の手書きの文字
△ 日の残る打ち出し太鼓の五月場所

     登美子
・ かくしたる秘密漏れさう青嵐
  夏場所や白星発進館沸かす
  水羊羹各駅停車の旅終る
△ 夏場所や相撲さし絵の肌白く
・ 網棚の荷の中重し水羊羹
     敬子
  夏場所やもんどり打てる砂かぶり
  名園に旅の語らひ水羊羹
  薩摩半島歯フェニックスに鯉幟
△ 糠床の程よき機嫌麦の秋
・ 森の精に聴かすオルガン聖五月

     幸子
  五月場所客も踏んばる土俵際
  ややこしき話ここまで水羊羹
・ 経唱へつつ筍を剥く御坊
  青空を見上ぐ一息田植かな
  振る舞ひの新茶を飲みて待つ列車

     鴻
  乳児好みの甘さあり水羊羹
・ 強風や穂波打たせて麦の秋
  夏場所や外人力士また強し
  水田は山の際まで早苗植る
・ 大口を開けて餌強請り燕の子
     一構
・ 豆飯や煮物上手のありし母
・ 鬢付け油匂ふ駅頭五月場所
  遠雷やぴくんと動く犬の耳
  ヘンデルを聴くひとときや水羊羹
  取的や肩に明荷の五月場所

     利孟
  名物に美味いものあり水羊羹
  両国の煉瓦の駅舎五月場所
  花苗を選るや蕾を数へては
  鎮守への小径をふさぎ蜂の箱
  動輪と子の丈くらべ風薫る