第125回 平成19年月3日11日
   憲巳
  風船やさよならをして空上がる
☆ 炎の先の見えぬ芝焼辞令受く
  風船につける絵手紙花の種
  雲雀ゐて葦に精つく遊水地
  白内障未知との出会ひ春浅し

   登美子
  風船やいまだ忘れぬ人の顔
  開店に急かれ風船膨らます
☆ 雲雀野や絵筆に吸はす草の色
  風船を握り体重測定す
  土手萌ゆる道路工事の柵はづれ

   昭雄
・ 母の息もらひ風船返りけり
△ 雲雀鳴く山かすめ打つ鍬のさき
△ 天領の田水豊かや雲雀鳴く
・ 雲雀翔ち一村風のゆきわたる
  紙風船季の移ろひ告げ弾む
   ともこ
・ 夕雲雀竹箆で削ぐ鍬の泥
・ 手土産の箱に片寄り桜餅
△ 空を差す手首に結び赤風船
・ 春光や泡を押し上げ水の湧く
・ 鳥帰る崖に遺構の川灯台

   芳子
  息もらひ紙風船の踊り出す
・ 翳し見る空に高鳴き告天子
・ 陽の当たる方に傾ぎて節分草
・ 春耕の老爺の肩にひかる鍬
  頬赤きマヌカンに着せ春ごろも

   良人
・ 手際よくひねり象る風船売り
・ 鳴き声を連れ高々と揚雲雀
  力尽きし風船かかり社杜
・ 鳴き声を風に散らしてあげひばり
  白椿微かな風に身じろぎす
  
  中天にあれど見えざる雲雀かな
  強風に靡く風船赤く揺れ
  天空の一点淡き雲雀かな
・ ビル街に流るる川や残り鴨
△ 畦焼くや村は総出の日曜日

   清子
  ゴム風船つく子の顔も丸きかな
  雲雀野や子は尻餅で足慣らす
  梅東風や香はほんのりとひんやりと
  春時雨羽織にかかる露の玉
△ 徹夜せし貌を洗ひて恋の猫

   敬子
  幻想曲聞ゆ河津の夜桜に
・ 一樹もてペンション覆ふ夕桜
△ 揚雲雀霊峰富士の裾野より
  風船を手に園児らの野外劇
  夜桜を誉めて異人と笑み交す
   幸子
  山独活の皮剥ぐ度に立つ匂ひ
△ 山葵田の湧き水砂を踊らせて
  首もたげ雲雀の声をさがす犬
・ 萎むほど突いて息足す紙風船
  気散じの歩先にほつと芝桜
△ 鳴き足りぬ雲雀落ち来る夕間暮れ

   聖子
  橋影に黒鳥の来て睦み合ふ
  せせらぎに上がる湯煙雲雀鳴く
・ 風船のビル縫ひて行く雨上がり
  子の夢を託し膨らむ紙風船
・ シャッターの音の行列梅日和

   永子
・ 突かるまま宙を漂ひ紙風船
  制服の肩震はせて卒業歌
・ 干し海苔を剥がす婆の手汐焼けて
  戸を繰れば匂ひ飛び込む沈丁花
   信子
・ つき飽きて折り目をもどす紙風船
  一息の卓のコーヒー花すみれ
△ 野生馬嘶く朝や下萌ゆる
  問診の一語一語や春時雨
・ 図書館の窓開け放ち夕雲雀

   比呂
  埒も無き噂ふはふは紙風船
・ 鳥帰る体内時計聞き分けて
・ 揚雲雀伽藍の著き穴の跡
  常世には向はず沈み流し雛
  初雛膳の小鉢に彩散らし

   美代子
  風船のキャラクター生る広場かな
  折雛の裾広げおく段の隅
・ 縄張りの野面騒がせ初ひばり
・ 牡丹の芽ほとりの石の温みかな
  晩方の媼一途に畦火打つ
   利孟
  隠居処の煮炊き一人ではなずはう
  つかまり立ちして見上げゐる仕丁雛
  風船の糸の長さの気ままかな
  花もよひ観光車夫は客を呼ぶ
  揚雲雀野州上州一声に