第134回 平成19年12月23日
   芳子
★ 落葉掃く老爺風筋追ひながら
△ 柚子の香の肌にやはらぐ仕舞風呂
・ 湖ひかる大白鳥の羽撃きて
・ 風花や歯科医繰り出す金属音
・ 寒晴や友の忌の日の雲迅し

   美代子
★ 冬菜漬重しの曲(くせ)を均しては
△ 風花や路地行灯の薄明かり
・ 黄落や歩々にまつはる光かな
  小白鳥一声阿佐をつんざきぬ
  古代裂継ぎし縫い目の冬やはら

   良人
★ 白鳥発つ両翼に荷を負ふ如く
・ 風花のしばし薄れて遠浅間山
・ 一の字となりて白鳥飛び立てり
  小春日やもやに浮立つ筑波嶺
  渡良瀬川は舞ふ風花の通り道
   永子
★ 張り詰めし空気を分けて白鳥来
・ 山宿を継ぎたる若き猟夫かな
・ 冬の海時化て入り江の船溜り
  風花のふわり降り立つ無人駅
  除雪車のわけても遠き峡の道

   昭男
△ 白鳥の夜は星屑に埋れ寝る
・ 風花や現れさうな山頭火
・ 風花や神馬静かに湯で拭かれ
・ 風花や羅漢の膝に石、小銭
  白鳥の知らせに使ふ万年筆(モンブラン)

   ともこ
△ 羽ばたきて胸ふくらませ小白鳥
・ 飛来数四十の掲示小白鳥
・ 風花や駆け寄り犬の纏ひ付く
・ 風花や壁の蔦の葉二枚きり
  小白鳥風より軽き餌に群るる
   一構
△ 冬うららベニスの迷路小路かな
・ 着ぶくれてグランプラスのカフェテラス
・ 冬ざryる髯の剣士のピアスかな
  息白しグランプラスを足早に
  暫しただ酔ひて勢ひしクリスマス

   比呂
・ 死に際の長きアリアや冬薔薇
・ 眼を寄せて磨く猟銃風花す
・ 数へ日や焦げ癖著きフライパン
  白鳥来英知の羽を携へて
  四肢持ちて這い蹲りし炬燵かな

  
△ 風花の空にせめぎて熱気球
  街々に電飾の花クリスマス
  学童や落葉に埋まる通学路
  白鳥や皇居の濠に睦まじく
  足音を立て驚かす浮寝鳥
   憲巳
・ 風花の舞ふ街道の大検問
・ 風花の舞ふ灯台に演歌の碑
  風花や荷も人もなき旧県庁
  白鳥や空の色にも逆らへり


   幸子
・ 綻びのまま着て妣のちやんちやんこ
  躊躇ひつ児の頬に触れ皸れ手
  泉湧く森の湖小白鳥
  夕の野の水墨山水雪催
  山越えて風花便り届きけり

   登美子
・ 白鳥の太く短き足黒し
  風花や降りた電車に降りかかる
  雪富士のはるか上飛ぶ旅の幸
  風花や大鍋の中プクプクリ
  輝ける富士現れる冬の旅
   敬子
  ベランダに光の馴鹿聖夜かな
  風花や秘湯に猿の瞑目す
  冬銀河あの方角に異国の娘
  落葉舞ふ風に彩りあるやうに
  白鳥の一陣ごとの波燥ぐ

   利孟
  木守柿発掘現場の穴と溝
  杉並木の一条の空風花す
  音立てて捌く天金新手帳
  数へ日や競馬新聞色あふれ
  白鳥の漁り泥を啜りては