第170回 平成23年02月20日
兼題 春日傘 浅春

   瀧凍てゝ水にねむりの刻もどる 重次





  利孟
 遠火事の空の火照りや豆を打つ
 七輪で暖取る露店フリージア
 春浅しかろがろと引く旅鞄
 色白の支那の血筋や春日傘
 千成りとなりて小粒の夏みかん

  一構
☆春浅し合格祈願の絵馬揺れて
☆城砦の石青々と春浅し
○春日傘閉ぢてなじみの甘味処
○湯煙に浮かぶ磐梯山春浅し
 凍滝やおもひおもひのシャッター音

  昭雄
☆春浅し巫女きりきりと髪束ね
☆春日傘赤子にかざし宮参り
・那須岳に雲駆け上る畑焼く日
・春浅し船頭のおろす手馴れ棹
 降るたびに名を変ふ雪の山に住む

  比呂
☆冴返る遠く赤子の夜泣き声
○春まだき浅き流れの藻のみどり
○行平のこびりつく焦げ遠雪崩
・待ち人に傾げて合図春日傘
 将棋盤隔つ長考ささめ雪

  敬子
☆校門に挙手の礼して卒業す
○春立つや筏流しの船頭唄
・マネキンを運ぶ車や風花す
・春日傘寄せてベンチをわけ合ひぬ
・風濤のせめぐ水音春浅し

  郁子
☆寒開けて太古よりある水の音
○早春の鳥を集めてゐる林
・春浅し眠りの深き古墳群
・春立つと余生の扉開けて待つ
 三丁目てふバス停に待つ春日傘

  芳子
☆校正の朱色の文字や春浅し
○おもふことはみな捨つること春の雪
・青銅の屋根の照映え春日傘
・春めくや祝辞の長き地鎮祭
 地を割りて出づる新芽の音弾け

  信子
☆縁日を抜け行き帰る春日傘
・ポストまで細き辻行く春日傘
・よべの雨紅梅になほ降り止まず
・島あまた浮かべ松島の松の雪
 春浅き湯気の中より灰汁掬ふ

  於した
○春日傘墓の犇めく町の墓地
○春浅し救急ヘリの着陸す
○春浅し空に白線飛行雲
・薬湯の緑に染り浅き春
 丹前も形見分けなるいとつかな

  恵子
○新色の淡き口紅春日傘
・春浅しひねもす脱いだり着たりして
・青空に吸ひ込まれたる奴凧
・春日傘瀬音聞きては遠回り
 小さな手豆撒くごとに福寄せる

  ミヨ
○オリーブ油塗りて休ます寒の頬
○春日傘朱塗の橋を渡り行く
・木のたかみ冬三日月の鎌のごと
 逃げ込みし崖に乱舞の三十三才
 科学館玻璃の水色春浅し

  聖子
○春立つや雲ゆつたりと流れ出す
○頬撫でる風の尖りて春浅し
・足元に気を配り差す春日傘
 代々の議員の写真春の雷
 春浅し走り根破るアスファルト

  鴻
○双児らしふたり揃ひの春日傘
・山茶花の垣をめぐらせ豪農家
・田園に煙の立ちて草焼かる
 春浅し学童の息まだ白し
 次々と咲き継げるかな梅の花

  健
○風を受け半身に構へ春日傘
 雪の枝たわわになりて春浅し
 春うらら手にした傘を忘れたり
 やはらかな日差しの中の日傘かな
 春浅し旅のバス停氷柱落つ