第191回 平成24年11月11日
兼題: 立冬 時雨


  利孟
 石蕗咲くや紀州徳川屋敷跡
 時雨るやしばられ地蔵は縄まとひ
 鳩吹くや頭を越える背負子の荷
 冬立つや黒猫坂を守りて坐す
 衿合はせ風の素通し菊人形

  聖子
☆束の間も休まず弾み祭足袋
△立冬の木霊谷より上り来る
・立冬の空薄紅に昏れゆけり
・立冬の堅き音立て閉づ門扉
・立冬やジョガーは蛍光ベスト着て

  敬子
△走り根をおほひつくして散紅葉
△尼寺の裏口灯し檀の実
・立冬や新書に朱引く人生訓
 時雨るるや峡の寄せ鍋取り囲む
 母縫ひし羽織懐かし文化の日

  ミヨ
△薪ぶつ割く音に呼ばれて冬将軍
△茶の花や路地にバイクの郵便夫
 お写経に賜る朱印初しぐれ
 喚鐘を打ち人入る冬の寺
 秋の蝶残花をめぐりいとまなく

  信子
△俄雨過ぎ立冬の日差しまた
・時雨来る気配日光いろは坂
・評判の屋台へ並び秋まつり
・冬に入る宇宙の隅に宇宙船
・虹懸けて立冬の雨過ぎにけり

  良人
△笹を打つ音引き連れて村時雨
・向ふ岸より来る時雨草なびく
・夕日影黒々伸びて冬に入る
・立冬や影のにじめる牧の牛
 時雨雲にはかに隠す筑波嶺

  鴻
△立冬や掌中に碗ずつしりと
・村時雨両手かざして走りゆく
・燃ゆる朱の地蔵の頭巾冬めく日
 古寺の参道埋める松落葉
 立冬の空に流れて鳶の舞

  昭雄
・みたらしに注ぐ湧水時雨来る
・立冬の雀呼び合ふ声弾む
・微笑の羅漢の在す冬日和
 降り頻る時雨は湖に皺寄せて
 冬立つ日筑波山男体山向かひ合ふ

  比呂
・喫茶去の軸を掛けをり時雨けり
・白秋忌利休鼠の母の帯
 お百度でめぐる回廊冬立つ日
 ちぎれ幣髪にかかりて七五三
 哭泣のごと冬波の轟ける

  健
・井戸端の会議散会時雨来る
・時雨来る転ばぬ先の傘広げ
 布団こみ追はれし主婦や時雨なり
 巡りくる季節の移ろいはや立冬
 ニュースから続々届く立冬便

 






 






 


       
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