第192回 平成24年12月16日
兼題: 十二月(師走) むささび


   利孟
 信濃にて終る巡礼十二月
 上野発札幌一便十二月
 親火より炎を頂いて秋遍路
 龍の玉関守石に止められて
 むささびの駆け星ひとつふたつ消ゆ

   芳子
☆鴨の陣営より水輪生るるかな
・那須岳に続く枯野の道祖神
・椀一つ増やしふるまふ根深汁
 みほとりの地位先荷物や冬館
 むささびや崩さぬ闇に眠りをり

   ミヨ
☆猪打ちの銃声山の殺気立つ
・むささびや熾火明かりの杣の小屋
・百穴古墳囲む畑を秋耕す
 堂普請仏ほとほと十二月
 冬日向つぐらの猫のぬの字かな

   一構
☆古時計今朝も捻子巻き十二月
・十二月朗々と誦す般若経
・禅寺に塵ひとつなき十二月
 山畑に一本の鍬十二月
 旅先の一人の夕餉十二月

   比呂
△ねんごろに豆煮る竈十二月
△耳奥に雪来る気配風募る
△露天湯の乳色雪の隠れ里
△木枯やいぶりがつこの燻し小屋
・むささびの鳴くや山の端?きて

   鴻
△味噌からき足尾の山の薬食ひ
・川原石白々鬼怒川の冬枯れぬ
・林道を埋める落ち葉を踏み分けて
 あれこれとせかせか動く師走人
 むささびの滑空姿や鳥の如し

   輝子
△むささびの怪しく月に浮かびをり
・初雪のはらりととける光かな
・初雪の白さ冷たく手に解けて
 お歳暮にあの顔この顔温かく
 年の瀬に大一番の宝くじ

   健
△むささびや終る気配の無き会議
 むささびの翔ぶ音森の静けさに
 末枯れや走馬灯ごと十二月
 十二月家族に笑顔赤子育つ
 カレンダー残り一枚十二月

   信子
・むささびの虚空へと翔ぶ刹那かな
・十二月ビルの間の大鳥居
・出航の沖の鈍色十二月
・出帆の銅鑼の音遠き十二月
 紐で抱く嬰の足首十二月

   聖子
・むささびの隅より覗く破れ窓
・十二月新聞受けにビラあふれ
・突き抜ける青の大空十二月
・小春日や新種いちごの除幕式
 短日や空缶ひろふボランティア

   敬子
・むささびの月の光に揺れる影
・寒星や母の手ズレの料理メモ
・冬日和雲の達磨は空睨む
 重ね着の福耳そらし電子辞書
 デイケアで過し無心の十二月

   美恵子
・ムササビや筆先掠る母の文字
・老若の集ひ第九の師走かな
・野良猫の振り返り居り漱石忌
 干物のことを言いたいの?
 携帯の待ち受け淋し山眠る

   昭雄
・むささびや闇に神招ぶ禰宜の足袋
・飼葉槽干乾び牧の十二月
 むささびやシテ摺り足に一巡り
 竹伐るは秋の季語でもあるのですね
 むささびの大願成りて宙翔る

   登美子
・むささびの洞へ納まり明け近し
・十二月戦艦大和を生きて卒寿なり
 冬ぬくし屋上から見上ぐスカイツリー
 山眠るブローチ落とした遠い日に
 「むささび」を図鑑に探す星の夜

   良人
・むささびの滑空腹をすかせたか
・むささびの飛び山寺の闇深し
 路地埋める車渋滞して師走
 木末含めて風に音あり町師走
 街中の木々に電飾師走かな