第193回 平成25年1月27日
兼題: 水仙 寒稽古


   利孟
 水仙の香を深くして常夜灯
 水餅の水替へ桶の薄濁る
 応援の親の足踏み寒稽古
 群青の空を広げて寒波来る
 着膨れて小熊の耳のつく帽子

   ミヨ
☆冬の蜘蛛仁王の腕吊りてをり
☆日を溜めて海へ傾く野水仙
・恵方へと小幣を立てて登り窯
・息続く限りの気合寒稽古
・霜強し開墾畑の石子積

   ともこ
☆吸飲みに満たし甘露の寒の水
・社への胸突き坂や寒稽古
・菜箸の突き出す甕の薄氷
・タナゴ棲む沼のかがやき水仙花
・寒稽古ゆるゆる白む格子窓

   芳子
☆大寒や囲炉裏離れぬ人となり
・初稽古白き襷の片結び
・香り立つ七種粥のあさみどり
・鳴き声を空へとつなげ小白鳥
・髪焦がす産土神のどんどの火

   昭雄
☆水仙の堅き蕾や立志式
・水仙や畏みくぐる躙り口
・寒稽古まづ神前に勢ぞろひ
・姿見に正眼を取り寒稽古
 水仙や鍵掛けてある箱生簀

   比呂
☆いまだ名の付かぬ仔牛や寒北斗
・だるま市耳掻きながら値引きせる
 千の慈手の一つに寒の握られて
 初稽古まづ固め文差し出して
 ヴィヨンの妻の赤き口紅水仙花

   良人
☆海からの風の宿りの野水仙
・竹刀打つ音の乾ける寒稽古
 岬吹く風の脚読む野水仙
 父と子に道行き触りの寒稽古
 道行を羽織り出かける寒稽古

   一構
☆寒稽古声張りあげて道場訓
・朝ぼらけ竹刀を担ぎ寒稽古
 寒稽古終れば湯気に曇る風呂
 寒稽古支度調ふ老いの声
 声あげて竹刀振る子や寒稽古

   登美子
・寒稽古手足の指を赤くして
・瑠璃色の空白銀の冬木の芽
・掘り返す土を巡りて冬の鵙
・水仙の根元へ流す厨の水
 水仙や手許明るく菜を洗ふ

   敬子
・水仙の一花机上を満たしけり
・黒帯となり勇躍の寒稽古
・炉を開く母の残せし毛糸籠
 花柊屋敷稲荷の光背に
 トナカイのイルミネーション年を越す

   信子
・向き合ふも背くも触れず黄水仙
・汚れなく透けたる袴水仙花
・元日や直なる杉のご神木
 古武道に学ぶ立居や冬桜
 四股を踏むまはしに汗の寒稽古

   聖子
・半泣きの子の足赤き寒稽古
・人足りぬサッカー試合冬田かな
・小雀のまぎるる崖の水仙花
 売り声の故郷訛り焼き芋や
 竹刀振る声甲高し寒稽古

   鴻
・廃屋の庭に群れ咲く黄水仙
・一月の墓静かなり烏鳴く
 藁屋根の崩るる屋敷返り花
 寒稽古豆三四郎豆亮子
 半月余解けずに残る日陰雪

   健
 道場の窓に差す月寒稽古
 凛として心洗はる水仙花
 水仙や旅の海辺を思い出し
 寒くなり味の深まる野菜かな
 寒月や齢を重ねなほ稽古

   大越
・野水仙風のメロディー伝へてよ
 母の干す芋紅色の屋根にかな
 寒稽古額に汗の光るまで
 縁結びの桃色だるま達磨市
 雪氷り馳せる通勤足取られ