第255回 平成30年4月29日
兼題:五月闇 鯉のぼり


  利孟  
 龍と化す形に捩れ五月鯉  
 面壁の背に忍び寄る五月闇  
 風船師お代頂戴してやをら  
 闇に香を満たして白き牡丹かな  
 仲良きは美しきかな四十雀  

  比呂  
☆べか舟の薄き底板夏めける  
☆神鶏の羽脱けて漫ろ歩きかな  
○雪形の兎耳失せ後じさる  
・朝風や尾を打ち合ひて鯉のぼり  
・どこまでも続く樹海の五月闇  

  ミヨ  
○春寒や納屋の奥なる馬具や鍬  
・窯の煙消えたる一日鯉のぼり  
・囀りや立哨衛士のエポレット  
・煉瓦窯の焚き口寄りの五月闇  
 観音山下る手種の蓬かな  

  美恵子  
○桜鯛細波のごと陽を散らし  
・リハビリの冷たき手摺り五月闇  
 制服の上げをほどいて五月鯉  
 せせらぎや空いつぱいの鯉のぼり  
 鯉のぼり尾を潜り抜け青菜採る  

  信子  
○五月闇茅葺母屋の深庇  
 耀ひてうねる鬼怒川吹き流し  
 畑打を終ふ吾に地に地に星の数  
 春宵の歌劇カーテンコールなほ  
 日を均し関東平野鯉のぼり  

  青樹  
・五月闇風ほとめきの雨をよぶ  
・五月闇座敷わらしの足音が  
・機関車の汽笛切り裂く五月闇  
 耽猫の騒ぎ落ち着き五月闇  
 大空を見上げゆうらり鯉のぼり  

  良人  
・五月闇風吹き溜まる杉並木  
・みちのくの屋敷囲ふ田鯉のぼり  
 風凪ぎて竿に寄り添ふ鯉幟  
 川岸に並ぶ家々鯉幟  
 ビル風に順風満帆鯉幟  

  木瓜  
・下ろされてなほ口開け放し鯉のぼり  
 伸びやかに風の吹くまま鯉のぼり  
 てのひらに若葉の匂ひ柏餅  
 野良猫の冷眼光る五月闇  
 春秋やほっとひと息ゴッホの絵  

  巴塵  
・那須の山裾に群れたる鯉幟  
 宮の杜椎の落葉の音一つ  
 鯉のぼり泣く子を高い高いかな  
 見あげればベランダにある鯉幟  
 鯉幟負けずに泳げ青い空  

  聖子
・鯉のぼり泣く子に高い高いかな
 五月闇コード撚りては長電話
 水音の絶えぬあぜ道五月闇
 生き物の如く尾の跳ね鯉のぼり
 国道の一斉点灯五月闇

  敬子
・かがやける空の青さや鯉のぼり
 蔵町に馴染みし異人夏きざす
 梅ふふむ宮に古刹の六地蔵
 農道を四方に走る夕焼雲
 人生の紆余曲折や花水木

  昭雄
・長男でしかも末つ子武具飾る
 筒鳥の遠鳴きつづく五月闇
 五月闇赤灯にじむ駐在所
 五月闇けふも夜干しの剣道着
 より高く爺の気骨の鯉幟