第269回 令和元年6月23日
兼題 流し 青簾

   利孟
 撓ふだけしなひながしの幟竿
 厚さ増すお薬手帳梅雨晴れ間
 腰揺すり音を紡ぎて風鈴屋
 撓ふだけしなひながしの幟竿
 炎昼の車夫の身鎧ふ藍木綿

   美恵子
☆梅雨深し薬売りの黒革鞄
☆女梅雨数珠煩悩の数の珠
△青簾深呼吸して面接へ
・麺を盛るガラスの器青簾
 畑垣に高き黄旗や流し南風

   昭雄
△青簾創業江戸の太柱
・ながし南風結の絆の堅き峪
・青簾おなじ寝相の兄弟
・葭簾吊るして村は静なり
・ながし南風乗ればすぐ着く渡し舟

   巴塵
△雑踏を隔ててつられ青簾
・青簾草履のやうなパンを買ふ
・ながしはえ苗立ち直る暇なし
・ながしはえ雲を走らす那須ケ岳
・ながしはえ宮の御輿の先払ひ

   ミヨ
△琺瑯の塩の看板夕薄暑
・便り来る青水無月の信濃より
・井戸の蓋さるる城跡ながしかな
 青芭蕉地窓の風に一服す
 幻戯庵うはさも少し青簾

   雅枝
△「ゆ」の暖簾分けて乙女の洗ひ髪
・植木屋の鋏響くや五月晴れ
・コンビニの旗のはためく青嵐
 春疾風遠きサイレン近づきぬ
 マンションのフロアに揺れあお簾

   比呂
・茅花流しかつての旅は舟に乗り
・七庚申祀る祠や梅雨の闇
・雨上がり泰山木のよく匂ふ
・相席の客に目礼青簾
・青嵐や仔馬母馬前後して

   良人
・裏山を筍流し吹き抜けて
・ざわざわと葦を騒がせみなみ吹く
・一陣の風やみてすだれ揺れ止まず
 裏通り表通りの青すだれ
 障子戸にうつすら動く人の影

   信子
・青簾街の灯りを来てくぐる
・今昔の駅路へ茅花流しかな
 ながし南風幾度厨に立ちて暮れ
 睡蓮の紅花白咲く数の中
 午後の陽の雲間に高く未草

   敬子
・夏夕べ一人ダンスの足復習ふ
・庭石を埋めて十薬花盛り
 大平山今満開の辛夷かな
 紫陽花のとりどり己が人生も
 夏空や南国土佐へ歌の旅

   木瓜
・還暦や海坂越えてながし南風
・さらさらと風の抜け来る青簾
 夏菊や自由気ままに目立たずに
 老鶯や朝の挨拶覚め止まず
 飛びまはる鷺草の群れエサをやる

   英郷
・隣家に心地良さそな青簾
 ながし南風やがて涼しくとばる夕
 愛し児の顔を背けし青簾
 ながしはえ流るる雲に先急ぐ
 色褪せし簾越しにも雲が行く