著者(河村隆夫)の創作への諸批評


   谷島瑤一郎(著者のペンネーム)の創作への批評を、年代順に列記する。 


(一)
山田昭夫「風見鶏」『北方文芸』第5巻第9号p60北方文芸刊行会
   昭和47年4月1日発行
              「翼」への批評
   (谷島瑤一郎「翼」『北方浪漫』p10〜44 北方浪漫同人)


   『北方浪費』創刊号の谷島遥一郎(河村隆夫)「翼」は長編の第一章だが、
   100枚はあろう。地味好みの私の眼には、この作者の才能は精巧なステン
   ドグラスのように七色の光彩を放って見える。ほめ倒すわけではない。
   若書きの初々しさ、抑制不能の情感の誇示、それとこれとの混淆が時に鼻に
   つくけれども、また三島由紀夫耽溺の跡も歴然としているにしても、ここに
   華麗な才能の萌芽があることは碓かである。今回は″純粋″探求者の手の記
   だが、一節を引いておこう。


    〈公園には誰もいない。
     丘の中腹の、長閑かな住宅地から、あざみの花のような犬の鳴き声が聞
     こえてくる。かすかな風に、ピアノの音が、今にもこわれそうな水玉を
     運ぶように運ばれてくる。
     ついいましがたまで、このベンチの傍らの、大きな樫の木の根もとに、
     薄桃色のワンピースの少女が、空を仰いで、虚けたように佇んでいた。
     春の空は、麻薬の粉をふるいにかけている。陽差しの金の糸と、霞の白
     い絹糸を、きめ細かな薄布に織りあげ、空に貼りつめ、その織目から僅
     かな粉が絶えず舞い下りてくる。見下ろす街並みは、廃人の眠りを貪り、
     夢みている。〉


   私は、久しい間、こういう文章を北海道内誌上で読んだ覚えがない。
   ロマン志向の露骨な工芸品的文体だが、僅か四日間で第一章を書き上げたら
  しいことにも驚かされるし、この秀抜な新人の向後を見守りたいと思う。


(二)山田昭夫「ことし下半期の道内創作・評論」『北海道新聞(夕刊)』 
   昭和47年12月19日 
       
昭和四十七年下半期の北海道内創作評論             


               (抜粋)
   二十代の谷島瑤一郎・小泉武郎・林原雅史の諸作が期待される。  


(三)山田昭夫「道内文芸新人展望」『北海タイムス(朝刊)』
    昭和48年10月4日

   
    昭和四十八年北海道内文芸の新人展望



               (抜粋) 
   二十代の新鋭をあげると、佐藤泰志(立待)と
   谷島瑤一郎(北方浪漫)が抜群、


(四)山田昭夫「高齢化する道内同人誌作家」『月刊ダン』
   p148・p150 北海道新聞社発行 昭和49年5月1日

          昭和四十九年北海道内作家評論
               (抜粋)
   つぎに二十代の新鋭を挙げれば、佐藤泰志(立待)と谷島瑤一郎
   (北方浪漫)が抜群、春山耿(文芸道場)、青木陽子(冬濤)宇田
   光一(北都)らがそれに続く期待の先頭グループだ。谷島は『北方
   文芸』に一作のみであるが、佐藤は同誌に三編も発表した学生作家
   だ。(中略)また今まで詩作していて最近小説に転じた熊谷政江
   (莞爾)も、先行者との距離を一気に縮めそうな期待をいだかせる。


(五)芒順子「はな誌」No6 P2 著者のプロフィール 芒順子発行 
   昭和49年12月1日

        
昭和四十九年「はな誌」著者紹介欄


     谷島瑤一郎 静かに燃えている北大生。将来性有望。






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