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ご質問への回答

鈴木様ご質問のメールありがとうございました。ご質問は私の説明が至らないからでもあり、補足説明も含めてご回答させていただきます。

 

ご質問の内容(1)

 

「すべての経済主体は財、サービスを購入し、購入代金以上の価格にて、 すなわち利益を上乗せして販売しようとする。」という仮定についてですが、

労働者が消費財・サービスの購入金額以上の金額で労働を販売しようとするならば、 労働者はそれによって得た差額をどうするのでしょうか。消費財を購入することに使うのではないでしょうか?(お金を捨てるのでしょうか?)


(貯蓄は銀行を通じて企業の投資(財、労働の購入)に使われるとします。)


もしそうならば、「自己の購入価格総計<自己の売却価格総計(この場合は所得)」は不等式でなく等式となるでしょう。

上記に対する回答

(1)

労働者はその「労働」を販売し、「給与・賃金」を受け取ります。(マルクス風に表現すれば)「労働力を再生産する」ための、すなわち日々の生活を営むためのコストを、「給与・賃金」が上回っていなければいけません。この上回る金額がゼロだったりマイナスだったりすれば、将来の住宅建築や子供の進学、老後の準備などのための「貯蓄」が全くできなくなります。
また、ケインズ経済学においても、「所得のうち消費しなかった部分を貯蓄という。またこの所得のうち消費した部分の割合を平均消費性向という」と定義しており、所得のうち消費しない部分があることを前提にしています。従って「労働者は得た差額をすべて消費財などの購入に使う」と考える必要性はないものと思います。

 

(2)

「貯蓄は銀行を通じて企業の投資(財、労働の購入)に使われる」とすれば、「自己の購入価格総計<自己の売却価格総計(この場合は所得)」は不等式でなく等式となるとのご指摘ですが、前提(不等式についての定理)に立ち返ってご説明したいと思います。


   ※ 不等式についての定理

(・・・・・@ )        (・・・・・・A)   ならば、 

   (・・・・・B)

すなわち、不等号の向きが同じである不等式の左辺同士、右辺同士の和はやはりその向きの不等号で結ばれます。(Bの式は@式とA式の和と解されます)
また、同じ向きの不等式を幾つ足しても、同様の結果になります。


(重要な前提:この小段落は全ての経済主体が「支払い<受取り」を実現できたと言う仮定の基で議論しています。)

さて、上記の不等式の定理を基に考えてみます。ある経済主体(NO.1)の期中に支払う金額を,受取る金額を と定義します。同様に「A」の文字を支払い、「B」の文字を受取りと考えて、
・・・・も定義します。それぞれの経済主体に着目して、下記のように不等式を作ります

経済主体NO.1          
経済主体NO.2          
経済主体NO.3                 


上記各不等式の和     ・・・C

C式の左辺は各経済主体の支払額の和であり、右辺は受取り金額の和です。経済主体の数を増やして不等式の数を増やしても同様の結果が得られます。すなわち、
「経済主体の支払い(購入)金額の総計<経済主体の受取り(売却)金額の総計」が導かれることになります。

ここで鈴木様のご指摘は、AとB:(つまり左辺と右辺)の差額である利益分は貯蓄となり「貯蓄は銀行を通じて企業の投資(財、労働の購入)に使われるとすれば世の中全体について「支払い<受取り」ではなく、「支払い=受取り」となりうるとおっしゃています

このご指摘は上記の計算過程において、銀行から融資を受けた経済主体NO.4を想定し下記の通り計算すれば「支払い=受取り」になりうるとの考え方です。

経済主体NO.1          
経済主体NO.2          
経済主体NO.3                 
経済主体NO.4          


上記各不等式の和     左辺と右辺は等しくなりうる。

経済主体NO.4も必ず「支払い<受取り」となるべく経済活動をしているのに左辺の支払い分だけ計算に加える。というのは不等式の定理の前提から違反しているのです。経済主体NO4を考慮に入れるのであれば、その右辺もいっしょに「」と言う形で加えなければなりません。またそうでないと期中の全ての経済取引を考慮していないことになります。

 

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