お金とは何か−1−(お金の成立ちについて考察)

1.「お金」とは?

 「お金とは何か」と聞かれたらあなたはどう答えるだろうか?突然聞かれれば「お金はお金」としか答えられない人が多いのではないだろうか。「自動車って何ですか?」と聞かれれば「4つ車輪のついた移動のための乗り物です」などと答えるのは比較的簡単である。「お金とは何か」と聞かれて答えにくいのは、自動車などの一般的な財と違い、そのものに実態的な価値(使用価値)が無いため、その価値の有り様を説明し難いからだと思われます。
 

 

   学生時代に教えられたように、お金とはそれ自体に使用価値は無い。「財やサービスと交換できる」という機能に特化した「交換価値」というべきものである。そして少なくとも経済がうまくいっているときには、いろいろな「使用価値(商品やサービス)」と「普遍的に交換できる」という性質から「価値尺度機能」「価値貯蔵機能」も生まれてくる。
 

 

 そして上述の「交換機能」「価値尺度機能」「価値貯蔵機能」の3つは貨幣の3機能と言われている。
 

 

    さてこの「貨幣の3機能」は「貨幣の持つ機能」を説明はしていても、「お金とは何か」という問いの答えではありません。。この漠然とした問いの答えを考えるために、「貨幣の成り立ち」について文献から勉強した内容を要約して、以下にご紹介します。(渡しもまだこの問いの最終的な答えを見つけてはいません)
 

 

(以下小段落「貨幣の成立ち」は「入門・金融」有斐閣などを参考にしました)
 

2.貨幣の成立ち

   16〜17世紀の欧米では商取引の決済手段として手形が多く用いられるようになりました。しかし、回し手形などでは、直接自分の知らない人が振り出した手形を受け取らなければならず、流通性に問題がありました。
 

 

 そこで、各ローカルな経済圏域に資産家を中心に設立された銀行が生まれ、銀行の発行した手形を流通させるように様になりました。これが銀行券の始まりです。
 

 

 しかし当時は制度が不備で、資産の裏づけ以上に銀行券を発行するだけ発行して経営者がとんずらしてしまうといった「山猫銀行」と呼ばれるものも散見されました。
 

 

 以上のような経験から、銀行券の発行を国が管理すべきだという認識が生まれ、国ごとに銀行券の発行を独占する中央銀行が設立されるようになりました。これが現在の紙幣の始まりだそうです。
 

3.「お金」の本質

    さて、こうした「お金の成立ち」からすると、「お金とはもともと民間経済の商取引のなかで発生した(手形)債権」であると解釈できそうです。
   「お金」の本質を「商取引で発生した債権・債務」と解釈すると経済的な諸問題ををより豊かにイメージ・考察することができます。
 

 

 例えば100万円の手形をイメージしますと、振出人にとっては100万円の債務、受取人にとっては100万円の債権です。つまりお金の大元の形である手形というのは当然のことながら、債権と債務が表裏一体で債権と債務の金額は同じです。
 

 

 ここで視点を変えて、「銀行預金」というのは一般的に「お金」と認識されています。そして、銀行は資金の貸し手(預金者)と借り手を仲介するだけの存在と解釈することもできるでしょう。
 

 

 お金の意味を「表裏一体である債権債務」と捉えるならば、銀行業界全体で全体で預金と貸し出しがおおむね同額であれば経済が安定していると思われます。
 

 

しかしながら、現在は貸倒れが多く発生した結果として、殆どの銀行は預金超過となっています。この貸倒れによって発生した「貸出残高を超過した部分の銀行預金」(業界では「余資」と言われています。)というのはいわば(債権による)裏づけの無いお金であると考えることができます。
 

 

そうしますと、ペイオフの実施で銀行の預金が無くなってしまう場合がある、というのは世の中から「裏づけの無いお金」を解消するために、必然的に起きる経済現象であると解釈することもできます。
 

 

また現在の経済学では通貨供給量を「現金+預金」という概念で定義しています。その概念を適用したマネーサプライ統計では、今の日本のデフレ不況においても通貨供給量が増えつづけています。通貨供給量が増えているのになぜインフレにならずデフレが続くのか今までは不思議でした。しかし「預金」の中に実質的にはお金としての裏づけの無いものが含まれている、と考えれば納得できます。正常な債権で裏づけされている預金だけをマネーサプライ統計に計上することにすれば通貨供給量は減少しつづけていると推測されます。
 

4.補足

この章ではお金を「債権・債務」と捉える考え方についてご紹介しました。しかし、それはお金に対するひとつの見方であり、現段階では他の見方を否定し得るものではありません。お金の定義を単なる「支払(決済)手段」としてのみ考える見方も可能かと思います。それについては章を改めて、考察したいと思います。また、この章で紹介した「お金の成り立ち」とは厳密にいえば「紙幣の成り立ち」であり、「貨幣の成り立ち」と言えば、次の章で紹介する「交換から生まれた交換のための道具」と言う側面がより当てはまっていると言えます。

 

 

 


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