おしゅかー、3歳児になる! |
(4)
その夜、ジュリアスが寝支度をしていると、部屋の外でコトンと音がした。何事かと扉を開けると、オスカーが枕を抱えながら、もじもじと廊下に立っていた。 オスカーは心が3歳児になってから、ジュリアスの館で暮らしていたのだが、寝室はもちろん別にしている。 「オスカー……」 ごくりと唾を飲み込みながら、ジュリアスはそう言った。オスカーの心は子供なのに、寝室でオスカーの姿を見るだけで、なんだか体が熱くなってくる。 「じゅりたま〜〜〜。昼間のね、オバケの話を思い出しちゃって、おしゅかー眠れないの。……だから、一緒に寝てくれる…?」 涙をためた瞳で懇願されると、ジュリアスも拒むことができない。 (オスカーは3歳児なのだ。3歳児なのだ……) とブツブツ自分に言い聞かせる。 「わかった、入るがいい」 ジュリアスはシーツをめくった。 「わ〜〜〜〜っい」 オスカーは元気よくベットにダイブする。そんな姿に微笑みながら、ジュリアスもベットに入った。(……そういえば、オスカーと寝るのは1週間ぶりだな) だが、いつもは寝るどころじゃないのだが、などと考えていると顔が紅潮してくる。とにかくオスカーは3歳児、ということを肝に入れて、ジュリアスはベットのなるべく端っこに寄って、オスカーに背中を向けた。 だが! 「じゅりたま、あったか〜〜〜い〜〜。えへへっぇ」 オスカーが嬉しそうに背中に頬をすり寄せてくる。ジュリアスはビクッと震えた。 (やめぬか、オスカー。そなたのその行為が私にどれだけの苦痛を与えるのかわからぬのか!) 風呂上がりの石鹸の匂い、背中に密着する逞しい体、そして首筋に感じる呼吸、それらが今まで忘れていた感覚を呼び覚まし、熱い抱擁を思い出してしまう。 そしてそれを熱望している自分をも思いだしてしまうのだ。 (なぜ私は今日まで、平気でいられたのだ……) ジリジリとさらにベットの端へ寄りながら、ジュリアスは体が火照ってくるのを止められないでいた。そんなジュリアスの苦悩を知らずに、オスカーは逃げるジュリアスの体を後ろからギュウッと抱きしめた。 (うう、平常心、平常心、常に心を冷静に保たねば) まるで念仏のように、ジュリアスは心の中で唱える。オスカーの腕の力は緩まるどころか、ますます強くなっていく。どうせなら、体の方も子供になってくれればいいのにと、ジュリアスは神を呪っていた。 「じゅりたま〜〜〜〜。ねえ、じゅりたまもおしゅかーをだっこしてぇ。ママみたいに〜〜〜! いつも眠れないときは、ママにだっこしてもらっていたの……ダメ?…」 不安そうなオスカーの声に、ジュリアスは渋々と寝返りを打った。 (うっ……) 精悍な、見慣れたオスカーの顔が目の前にある。この寝室でいつもジュリアスの唇を捕らえ、そして体中をたどっていく…………オスカーの顔。 ジュリアスは妄想を慌てて振り払い、とにかく顔を見ないようにして、オスカーをギュッと抱きしめた。 遠い昔に母親に抱きしめてもらったように、静かに背中をさすり、子守歌を歌いながら、努めてオスカーの体を意識しないよう、自分の体も変化しないよう、ジュリアスは懸命に努力していた。 だが、オスカーの呼吸は安らかになるどころか、だんだんと苦しそうになっていく。 心配になったジュリアスは、とにかくオスカーを落ち着かせようと、強く抱きしめ、背中を何回も何回もさすり続けた。 「じゅりたま……」 オスカーが辛そうに言った。 「どうした、まだ怖いか? 仕方のない奴だ……」 ジュリアスは優しくオスカーの額に口づけた。オスカーはもじもじしながら、首を振った。 「あのね、もう怖くないの……でもね、痛くなっちゃったの」 そう言って顔を赤らめて、いっそうもじもじとする。 「どこが痛いのだ? 言ってみなさい」 心配そうにジュリアスはオスカーの髪を撫でながら言った。 「……あのね………」 ジュリアスの耳に口を寄せると、ボソッとオスカーは囁いた。 「…………が…痛いの……」 途端にジュリアスの全身がボッと熱く燃え上がった。そして理性もぶっ飛んでいく。 (もうよい、我慢も限界だ) ジュリアスは完全に開き直った。 「…オスカー、私のここも触ってみるがいい」 オスカーの手を取ると、ジュリアスはゆっくりと導いた。 「わぁ〜〜じゅりたまも同じになっている! ねえ、これって病気なの? おしゅかーがうつしちゃったの?」 心配そうに大声を出すオスカーの口をジュリアスはそっと人差し指で押さえる。そして婉然と微笑んだ。 「そうかも知れぬな…。これは私とお前の間でしか、起こらぬ事だ。……だから私が鎮めてやろう」 グイッとジュリアスはオスカーにのしかかると、不安そうに怯えるオスカーにそっと囁いた。 「さあ、体を楽にするのだ……」 そう言いながら、ジュリアスは必死で頭を働かせていた。いつもはオスカーのなすがままで、手順など覚えていない。覚えるところか、いつも頭がボーっとしている気がする。 だからとにかく、自分が気持ちいいと思うところを同じようにオスカーにするしかない。 もうすでに、ジュリアスの頭にはオスカーの心が3歳児だということが、抜け落ちていた。 「オスカー、いつもいつも、私ばかり……今夜はお前を私が愛してやる……」 ジュリアスはオスカーの夜着を脱がせ、自分も脱いだ。そしてぎこちなくオスカーの胸に手を這わせる。 「オスカー……」 ジュリアスはオスカーの厚い胸板に口づけし、オスカーの体中のすみずみを丹念にたどっていく。 「…ジュリ……さま…」 オスカーの呼吸がだんだんと激しくなっていく。 「気持ちいいか?」 ジュリアスは口づけの合間にそう尋ねる。オスカーはこくんと頷く。 「……そうか」 うっとりと微笑むと、ジュリアスはオスカーの上に跨ると、オスカーの熱い場所を確かめ、その上にゆっくりと腰を落としていく。 「ああ、オスカー……」 ジュリアスは満足そうに吐息を吐いた。そうだ自分はこれが欲しかったのだと今さらながら、痛感する。 「…オスカー、オス…カー……」 その名前を呼ぶだけで、興奮がだんだんと高まってくる。 すると、その時までは、呆然とわけがわからないといった表情のオスカーの瞳がキラリと光った。次の瞬間、ジュリアスの腰がグイッと引かれ、強く下から突き上げられる。 「ああ……っ」 途端にジュリアスの唇から悲鳴が上がった。そのまま全身も強く引き寄せられ、ジュリアスは易々とオスカーに組み伏せられていた。 「……今夜の貴方は、いやに大胆ですね…」 オスカーはニヤリと不適に笑った。 「オスカーっ! もどってきたのだな! オスカー!」 ジュリアスは懸命にオスカーにしがみつく。 「いつでも貴方のお側に……」 オスカーは力強く突き上げる。ジュリアスはその動きに朦朧となりながらも、何度も何度もオスカーの名前を呼び続けていた。 |