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流れクズ(1999〜2000年末年始・四国)

ホームレスではありません。いちおう、レジャー中です。

年末年始、高知・桂浜を目指して全国から集まってくるライダー達。
そこにはバイク乗りならではの時空間が存在するのであった。


「はいっ!お乗りになれますよぉ!!」

キャンセルを待つまでもなく、アッサリと乗船が許可される。
徳島行きフェリーよ、こんな事でいいのか?多客期だぞぉ!!
などと思いながらも、乗れるに超したことはない。
すでに他の車両は乗船済みで、係りのオジサンの無線機からこぼれてくる

「お〜い!バイク1台!(なんだよぉ、今更来るなよぉ)」

そんな声に迎えられて船内へ。

バイクは10台位か。
オフ車は無し。
とっくに乗船を終えているそのオーナー達は、すでに他の客と同化してしまったのか全く見当たらない。
指定された2等寝台の部屋は閑散とし、4人ブロック貸し切り状態。

早速ルービを買い、窓際のテーブルで一人飲む。
「フェリー」=「宴会」なる図式を期待していた訳ではないけど、ちょっぴり寂しさを感じる。


ベットに寝そべり、うたた寝。
妙にリアルな夢を見る。
やはり設定はフェリーの中、ロビーの床に座った豊田組の男女数名が

「よぉ!!起きたか!!まあ、飲もうぜ!!」

などと微笑む。
ああ、やっぱり乗ってたのか!良かった、寂しかったよう!
くつろぐ内に次第に話の展開が現実離れして来て、夢だと気付く頃に目が覚める。
目が覚めた現実の世界、そこは閑散としたベッドルーム。
夢の中でホッとしただけに、余計に寂しさが込みあげてくる。

こりはヤバイ!いったいどうしちまったんだ!今から旅立ちじゃないか!
こんな事は今までだって有ったじゃないか!
フェリーなんて、ただの移動手段じゃないか!
ましてや、俺はナイスでロンリーな旅人じゃなかったのか!


ふと、キャンプデビューの夜を思い出す。
北海道のとあるキャンプ場。
夢と不安に胸膨らませて辿り付くと、そこはファミキャンの世界。
バイクも数台止まっているけど、グループの様だった。
初心者だとバレ無いように事前に練習までしたテント設営は、誰にも関心を持たれる事も無いままコッソリと終了し、じべたに座ってボンカレーなどを作っていると・・・

「こんばんわぁ」

シトリのオジサン。
おおっ!トシはイっちゃってるけど、こりがキャンパーのふれあいかぁ?
ワクワク!!な・何を話そうかなぁ・・・・

「あのぉ、キャンプ場の使用料を頂きたいのですがぁ・・・」

結局一人きりで過ごし、慣れないテント就寝にあまり熟睡出来ず、早朝から逃げるように立ち去った、遠いあの日がよみがえる。


ふたたびロビーでルービを飲む。
すでに人影は無く、誰も見ていないテレビだけが妙に楽しげに声をあげている。
まあ、いいさ。
あのキャンプの朝、俺はキャンプが嫌になっただろうか?
否!!そんな事はない。
その時思った筈だ。

「俺のキャンプ人生はこれからだ!!!」って。




最悪の年越しでした。
30日の晩に死ぬほど飲みすぎ、生ゴミ状態で迎えた大晦日。
ロクに食い物も食えず、テントに潜り込んで恍惚の時を過ごすのみ。
そんなひとときも長くは続かない。
まどろんでいると、いきなり「がんじ」(以下、G氏)の襲撃

「おらぁ!!なにやっとるんじゃぁ!!飲まんかい!!」

「い・胃がぁ!!勘弁しちくりぃ!!!」

「なめるなよぉ!体育会のノリで行くのじゃぁ!!!」

引きずり出されて地獄宴が続く。

隙を見て、再びテントに逃亡すると、再びG氏

「おらぁ!!命削ってでも飲まんかい!!!」

と、ハナをかんだティッシュがボンボン飛んでくる。


夜。
年超しのカウントダウンには参加したい。
その為にも休養を・・・・

うっ!!テントの方へヒタヒタと近づいてくる足音!!と・止まったぁ!!

「おらぁ!!ふざけるなぁ!起きろぉ!!みね部長も寝てるから起しに行くぞ!」

被害者は、一気に加害者の一味と化し、連れだって峰部長のテントに。

4人用のテントでグッタリしている峰部長、そこへドヤドヤと入り込む。

「起きろぉ!!起きないとここでゲロ吐くぞぉ!!!」

たまらず起きる峰部長、それでも無情にテントの中で屁までコカれる始末!


キャンプ場のすぐ前の砂浜で、午前0時のカウントダウン。
3・2・1・ゼロの途端にカンパイの嵐!
手持ちロケット花火が足元を危なく飛びかう中、2000年という記念すべき年が始まったのであった。



次なるイベントは、お約束の初日の出。
それに備えて寝に入る人々にまみれてコッソリテントに逃亡。
ああ・・とても初日の出を見に行く元気は無いけど、少なくともそれまでは平和に寝れるぞぉ!!!

「おらぁ!!!今夜はオールナイトじゃぁ!!起きんかいっ!!」

や・やっぱり・・・・・

んもぉどーにでもしてっ!!!!!!

当然の様に寝る事を許されない峰部長、開き直りか本性なのか、お下劣トークを連発!!
まぐなと二人でシモネタ夫婦漫才風。
おぞましかぁぁ!!

いきなり、G氏が立ちあがる!!
こ・今度は何が起こるのだぁ!!!

「あのぉ・・・寝てもヨロシイでしょうか・・・・」

にゃ・にゃにおう!!!
キサマ、今更何を言うかぁ!!!

と言いたい気持ちをグッと堪え、

「どーぞどーぞ!!お休み下さい!!!」

これは、G氏さえ寝てしまえば自分も寝れる的なナマヤサシイ意味では無い!


さあ!!
報復攻撃の始まりだぁぁ!!!!


(翌朝、モソモソとテントから顔を出すG氏。その顔中にはオゾマシイ程の落書きが・・・)



G氏の事を極悪非道に書きすぎたので、少しはフォローせねばなるまい。
彼はただ単に凶悪なキャンパーなのでは無い。
ナイスガイなのである。

桂浜の年越しはバイク雑誌にも紹介されている為、誰も知る人の居ないライダーもやって来るのだけど、中には宴の輪の中に入ってこれずに一人で寂しくメシなどを作っているライダーもポツリポツリと居るのである。
G氏は、そんな人達の所を丹念に回って気さくに声を掛けたりして、何とか楽しみを味あわせようとするのである。
また、ヘンなニ〜チャンが現れて

「おいっ!!この集まりの主催者は誰だぁ」

と言ってきても、何ら躊躇する事無く

「俺だ!!何の用だ!!!」

などと、とにかく強いのである。

彼は「キャンプ宴会」をこよなく愛し、参加する者をいたわり、妨げる者から体を張って守ったりしてしまうのだ。
いいヤツなのだ。

少しフォローするつもりが誉めすぎてしまったのだ。

そんなG氏も、年を越したあたりでエネルギーを使い果たし、日に日に弱ってきて、寝たり起きたりを繰り返す様になってしまった。
ちょこっと買物に行くにも、そんな状態でのハーレーはツラそうで、キックも弱々しく、排気音が凶悪なだけにいっそうの哀愁をおびてしまうのだ。
苦労して買ってきた栄養ドリンクをテントの前に並べ、ヒクヒクと過ごす午後なのであった。


元旦の朝。
日本中ほとんど晴天だったそうで、ここ桂浜でも水平線からの初日の出となる。
多くの人出、観光客からこきたないキャンパーからゾクから空手寒稽古のオコチャマから、んもぉウジャウジャ居るのである。
寒稽古のオコチャマ達は海に入り、コシまで漬かってツキを繰り返す。
果たして、初日の出と共にやることによって何の効果が有るのか判らないけど、頑張っているのである。
指導者のオトナは海に入らずに口だけで指導し、こちらは頑張って無いのである。


年末年始のセレモニーが終わった後は、とにかく食道楽なのだ。
本格的な料理から怪しい残材料料理まで、バイキングの様に色々と楽しめるのである。

ここで、怪しい男が登場!!
見かけはアウトロー風、しゃべるとオタッキー風なその男、とにかくウルサイのだ。
火加減・塩加減・切り方から鍋のフタを開けるタイミングから・・・
とにかく口を出さずには居られない!!!
しかも妙に指示が細かいのだ。
そして、自分では一切何もやらないのである。
いつしか彼は、人々から「口場六三郎先生」と呼ばれ、

「口場先生!!鍋のフタは何本の指で持てば良いのでしょうか?」

「口場先生!!ハシの角度はどうしましょう?」

などとおちょくられても、本人は嬉しげに、いちいち指示を出し続けるのであった。
おそるべし!口場六三郎!!
彼の旅は、まだまだ50日程続くそうである。



桂浜に、TW組の新人が来ていたのだ。
雑誌の「メンバー募集」に応募してきた彼とは、これが初対面。
お互いに誘い有って来た訳ではないので、偶然の遭遇なのであった。
彼はなかなかスルドイ男で、キャンプ場にでもとっくりとおちょこを持参して本格派アツカンを作ってしまうのだ。
反面、毎晩の様にシッカリと宴会に参加していても、朝から夜8時くらいまではキッチリと走りに消えてしまうのであた。
そして、カツオのタタキなどのゴージャスなオカズを手に、笑顔で帰ってきては皆を喜ばす英雄的行動!!
同じ組員としては、深く反省した上で見習わざるを得ない。


去年は飲んで飲まされて全面的敗北に終わったショッカー軍団、今年は強力なのだ。

「イーッ!!頼むから寝かせてくれぇ!!!」

などとショッカーの声で逃げ惑っていたのがウソの様に、気合十分な防御体制!!
何やら秘策が有るらしいので探ってみると・・・・

な・何と、酒の合間にポカリスエットを暖めたヤツを飲んでいるではないか!

「ポカリはぬるめの燗がいい!!」

と自慢げに叫ぶのはいいのだけれど、それがあぶったイカや無口な女に合うのかどおかは不明である。
ぼんやり灯ったアカリの場合も言うまでも無い。


その他モロモロ、スルドいキャラクターの連中と過ごす日々を重ねる内に、帰りの船が出る日は確実にやって来るのである。
フェリーの出港時刻は夜8時。
昼過ぎに、いったん港までキャンセル待ちカードをもらいに行く。

その途中、無料の渡し船・高知県営フェリーに乗る。
フェリーと言っても、クルマ4台で満員になってしまうサイズで、なかなかアジアしているのだ。
姿を見せない操縦係の他に、30代・50代の男二人の甲板員。
お互いに無言でそれぞれの役割をこなしている。
バイクで乗りいれると

「そっち!!」

という風に、無言で指を指す。
何の固定もしないまま、バイクにまたがったまま出港を待つ。
他にクルマ1台、チャリ3台。
乗務員の方が多い航海も多いのであろう。
もっとも航海という程の事も無く、幅が広いと言えども川を渡るだけだから、あっさりと到着してしまう。
降り際に30代に会釈をすると、やはり無言でペコリと軽く頭を下げ返してきた。
ノンビリとした反面、大型船の行きかう航路を横ぎりながら行き来するチビフェリー、いつまでも頑張ってほしいものである。


手に入れたキャンセルナンバーは1番!!
朝一でターミナルに行った去年が7番であったのに、今年はやはり旅行客が少ないのだろうか。
まあ、ひと安心。
安心したあとは桂浜に戻り、再びルービ!ルービ!ルービ!!

ついに今度こそ、桂浜を去る時間が迫る。
薪が尽き、猛猛と白煙をあげる生木の焚き火に見送られながら、再びチビフェリーに。
同じバイクが再び乗って来た事にはまったく無関心な甲板員達は、先程と同じ動作を淡々とくり返し、同じ会釈で見送りを受ける。

さすがにキャンセル待ち1番、アッサリと乗船となる。
しかし、2番が乗船する事は無かった。
混んでいた訳ではない。
キャンセル待ちは1人しか居なかったのだ。

唯一のキャンセル待ち乗船客となり、あまりにも空きすぎていた為か、期待したドライバールームには入れてもらえず、2等タコ部屋に落ち着く。
行きと同様にバイク自体が少なく、数少ないライダー達もどこに居るのか判らない状態である。
今度は寂しさを感じる事も無く、何やら穏やかな気持ちで一人ルービを開ける。

これで正月も終わり。
全国に散ってしまったツワモノ達にカンパイ!!!!

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