ブラボーつるおか(1993秋・東北)その3(携帯版)


鶴岡ユースホステルで向かえた朝。

昨夜の宿泊者は、一人旅のライダー4人と我々で、全部で6人。
そうなると、なんとなく全員が集まって、否が応でも話が盛り上がる。
アカネちゃんと二人きりで語り合う展開を期待していたハズなのに・・・・・
でも、なんだか妙に気が楽になった事に自分でも驚きながら、とにかく楽しいヒトトキだったのだ。

各々がコッソリ持ち込んだ酒でカンパイし、旅談義をしたり、バイクの話になったり・・・・・・
女性はアカネちゃんを含めて2人だけなので、どうしても女性2人を中心とした会話になりがちで、
「そうなのよ。女一人で走ってると、けっこうクルマからイヤガラセさせるのよ」
「うんうん。髪の毛は絶対にジャケットに隠すわよね。隠してないのはロン毛のオトコ!!」
なぁんてネタが続く。
アカネちゃんが他の男と話をするのにヤキモチを焼く訳ではないけれど・・・・・・
共にケラケラ笑う姿を見ると、ほんのちょっぴりフクザツな心境だったりもする。
明らかに2人で一緒に来ている我々は、どういう関係に見えるのだろうか。
誰もわざわざ聞いてこないし、聞かれちゃったら何て答えようか。

「こないだなんか、スリヌケしてたら、ぶつかったなんて言いがかりつけられたのよぉ!!」
「まじぃ?・・・・」
「で、絶対ぶつかってないって言ったら、いいから電話番号教えろだって!!」
そんなアカネちゃんの話に、他の連中と一緒になって「へぇ!」なんて驚いてるくらいだから、少なくともコイビトどうしには見えなかったろう。
「アカネさん、それはタイヘンだったわねぇ」
「うん。でも、今回はトモダチと一緒だからヘイキよ」
アハアハと、弱々しく笑うワタクシ。


一通りの記念撮影が終り、それぞれの行き先に散って行くライダー達。
いつもながら、妙にすがすがしく、そしてちょっぴり寂しいシュチュエーションだったりする。
でも今日は、一緒に走るパートナーが居るのだ。
オトモダチが。


そのオトモダチと、まず目指したのが・・・・・・・
「観光ポスターに出ていた教会に行ってみたい」
「えっ?」
「ダメ?」
「と・とんでもない。行こうよ」

アカネちゃんの言う教会とは、鶴岡城址にある『鶴岡カトリック教会天主堂』というヤツで、なんでも明治時代に建造された、由緒正しい重要文化財だそうなのだ。
今日の予定を考えると、あまり鶴岡市内で時間を潰したくは無いけれど、まあ、ちょこっと見るだけなら・・・・・・・
しかし、ここでもブラボーな出来事に遭遇する事になってしまった。


妙に屋根の尖がらかった、古式ゆかしい建物である。
テキトーに写真などを撮りながら眺めていると、建物の中から一人の男が出てきた。
「どうぞ、中もご覧下さい」
神父さまというよりも、どう見ても礼服といった衣装のオッサンである。
「そ、そうですか。じゃあ・・・」
中に入ってオドロいた。
まさに結婚式の真っ最中なのだ。
「どうぞこちらへ」
さっきのオッサンに招かれるまま、参列席に座らされる。
教会での結婚式と言うのは、誰でも自由に参列出来ると聞いた事があるけれど、まさか通りすがりの旅人でしかない我々まで・・・・・・・・

なんだか妙に浮いている。
コキタナいジャケット姿は我々だけなのだ。
まさかご祝儀までは取られないだろうけれど、困った事がひとつ。
ココから、出るに出られない雰囲気なのだ。
「ど・どうする?」
「どうしよう・・・・・・」
バージンロードを踏みしめながらの新婦の入場、神父さまのアリガタい説教、誓いの言葉、そして誓いのチス・・・・・
ボォーっとそれを眺め続ける。
オルガンの演奏とママさんコーラスのような賛美歌がガンガンと響き渡る中、ふと見ると、どうやらアカネちゃんはカンゲキしているらしい。
さすがに、まだ
「オレとアカネちゃんの時も教会で・・・」
なんて所までには思考が短絡しなかったけれど、この古めかしい教会のフンイキにも呑まれたのか、なんだか妙に神妙な気分になってしまった。


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