ブラボーつるおか(1993秋・東北)その4(携帯版)
結局、最後のライスシャワーやらブーケ投げまでキッチリと参列し、気がつけば1時間近くのロスタイムである。
今日も、なんだか慌しくなりそうだ。
「じゃあ、ちょっと急ごうか」
と言いかけようとした途端、アカネちゃんの声のほうが先に出た。
「ねぇねぇ、せっかく鶴岡に来たんだから、『鶴岡八幡宮』にいこうよう」
「えっ?それって鎌倉じゃなかったっけ・・・」
「だって御本尊はココでしょ?」
「そ・そうなの・・・(謎)」
「アタシのオトーサンも、鎌倉の鶴岡八幡宮が好きで、よく行ってたの」
「・・・・・・・・」
「ねぇ、行こうよう」
結局、ソレも見る事になってしまった。
しかし、ツーリングマップや市内の案内図には、その存在が載っていないのだ。
半信半疑ながら、市内を検索する事にする。
武士の棟梁である源氏が、一族の守り神として崇拝した鶴岡八幡宮。
有名なのは鎌倉だけれど、それはいわゆる出張所のようなもので、本店(?)は京都なのであった。
そしてこの鶴岡市とは無関係で、縁もゆかりも無い。
もともと存在していないのだから、鶴岡周辺の地図に出ていないのは当然の事である。
そんな事も判らない当時の我々は、鶴岡の市内を右往左往しながら、ムダな時間を費やし続けた。
しかし神様は時折、ブラボーなイタズラを見せてくれるのだ。
先ほどの天主堂の前を何度も行ったり来たりしているうちに、ふと、コキタナいカンバン地図が目に入った。
怪しい業者が広告料の名目で商店からカネをセビり、トタン板に手書きで書いて道端に不法取付けしているアレである。
そのカンバン地図に、『八幡神社』なる文字を発見したのだ。
「あ・あったぁ!!」
気合を入れてダッシュする我々。
そこは・・・
なんともチンケな規模の、いかにも村の鎮守さまのような神社なのである。
「こ・こりが、あの鶴岡八幡宮の御本尊?」
「へんねぇ。でも、支店のほうが栄えちゃうって事は、世の中には良くあるわよ。」
「そ・そういう物かなぁ・・・」
せっかくだから参拝し、賽銭を投げて手を合わせながら、ワタクシは
「ココは、鶴岡八幡宮とは全く無関係なのだ」
なんて事を確信していた。
しかし、それを口にしたら、果してアカネちゃんはどうするだろうか。
「ココじゃないなら、ホンモノを探す」
なんて言い出すだろうか。
これ以上ムダな時間を費やしたくは無い。
だって、
「鶴岡市には鶴岡八幡宮など存在しない」
という事も、おそらく間違い無いと思われたからだ。
ひょっとしてアカネちゃんは、マジでココが鶴岡八幡宮の御本尊だと思っているのだろうか?
いやいや、ソレでは余りにもアフォすぎる。
だとしたら、やはり鶴岡八幡宮の存在を疑いながらも、気を使って黙っているのかもしれない。
お互いに気を使いあって、満足したフリをしあってるなんて、マヌケすぎるではないか。
いやいや、気を使ってくれているのではなくて
「もういいじゃん。満足したフリしてるんだから、余計な事は言わないでよねぇ!」
なんて感じで、テキトーにアシラわれているのだとしたら・・・・
ワタクシのすぐ脇に並んで、目をつぶって手を合わせているアカネちゃん。
この時、アカネちゃんに対して、今までで一番の距離感と、そしてイラつきさえも感じてしまったのだ。
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