オリオン日記(2002夏・西表島)その9(携帯版)
●8/15(木)
今日は親子3人で行動開始。
浦内川を遡り、マリウドの滝、カンピレーの滝を目指す。
浦内川は、西表島どころか、沖縄県で一番長い川なのだ。
星立ての集落を過ぎて程なく、浦内川にかかる大きな橋が現れる。
橋の手前の小道を左折した所に、ガケにへばりつくような船着場があった。
仲間川の観光船よりも一回り小さな船で、ちょっとボロっちい。
こちらは頻繁に船が出ていて、待たされる事も無く乗船し、さっそく川を遡る。
両岸は山が迫った断崖なので、仲間川に比べればマングローブの森の規模は小さい。
でも、狭い分だけ、
「さぁ、ジャングルの奥地に突き進むぞぉ!」
といった感じで、仲間川とはちょっと違った探検気分なのだ。
軍艦岩という地点で下船。
ここからは山道を歩かねばならない。
「はいっ。2時間後に船が迎えに来ますからねぇ」
滝の展望台までは徒歩20分、そこからマリウドまで10分、さらにカンピレーまでは10分。
コースタイムはたいした事が無いのだけれど・・・・
一抹の不安があった。
そう。オコチャマをオンブしているのだ。
思い起こせば、最後の登山は2年前の剣岳。
その時に比べ、確実に肥えてしまったワタクシ。
オコチャマの体重と、わが身の増加分を加算すると、なんと20キロ近くにもなる。
こりは、剣登山の時に背負った荷物よりも重い。
ダラけて体力も衰えている事だろう。
当初は、
「まぁ、どうせ往復道だし、キツかったら途中で引き返して船を待つか」
などと気弱に構えていたのだけれど、そうは言ってられない事態となった。
なぜなら、同じ船にジョン・レノン風の白人家族が乗っていて、同じようにコドモをオンブしているのだ。
しかもレノン一家はカンピレーよりも先を目指すらしく、国有林立入り許可証まで用意している。
当然、コドモ以外の装備も重い。
くぬやろぉ。
ココは八重山、風景はアマゾン化してるけれど、一応はニポンなのじゃぁ。
ニポン人として負けてたまるか。
親同士が散らす火花、といっても、コッチが一方的に意識してるだけなのだけれど、双方のオコチャマ達は何やらテレパシーでも交信しているがごとく友好的に笑みを交し合い、ときおりフシギな言語で会話も交わす。
もちろん、どちらの親にも理解出来ない言語である。
心配するほどの事も無く、皇族でも来たのではないかと思われるような整備された道で、登る傾斜も高尾山クラス。
オンブひものセッティングに戸惑っての最後尾スタートだったのに、順調にニィチャンネェチャン連れを抜き去ったりしながら邁進。
展望台で休むシトビトをイッキにゴボウ抜きし、しかしそれでもレノン一家には追いつかない。
ヤルなぁ。
ほどなく、滝見物を終えて次を目指すレノン一家と入れ替わる様に、マリウドの滝に到着。
鬱蒼とした原生林の中に唐突に現れた岩盤が、なぜだかパキンと段差がついちゃったような滝。
落差20mほどの小さな滝ではあるけれど、なんとも涼しげでキモチが良い。
滝の上側の岩には、落とし穴のように直径50cmくらいの円形の穴がいくつもあいている。
この穴の正体は不明だそうな。
もう一息歩いて、今度はカンピレーの滝に到着。
やっぱり丁度、レノン一家が出発するところだった。
こちらの滝は、小さな段差が繰り返されている急流と言った感じで、滝と言うのにはちょっと大げさかもしれない。
しかし、カンピレーというのは『神々の座』という意味らしく、確かに神々しい風情はある。
まぁ、そういう目で見ればだけれど。
いずれにしても、ここでノンビリと過ごせば気持ちよさそうな場所であり、更に先に伸びている道の道標なんかも魅力的に誘いをかけて来るけれど、2時間という制限付だから仕方が無い。
帰りの船の時間が気になる。
ちなみにこの道は、更に浦内川を遡り、山を越えて仲間川の方まで続いている登山道。
果たしてレノン一家はどこまで行くツモリなのだろうか。
オコチャマ連れではなかなかハードな感じである。
どちらの滝の名前も、何やらアイヌ語っぽい雰囲気である。
もともとニポンに居た縄文人は、後から来た弥生人に押しやられてハジッコに逃げていったとの事で、アイヌ人と琉球人には共通する点も多いそうな。
軍艦岩の船着場に戻ると、帰りの船はすでに到着していた。
船着場の手前の、ちょっとした休憩場所に陣取った係員が叫ぶ。
「はぁいっ。オクサマ、こちらに弁当の用意が出来ております。どうぞどうぞ。ホラッ、ダンナとガキは早く船に乗った乗った!とっとと帰りやがれ」
何とも差別的な対応!!
と言っても、こりは理不尽ではない。
朱蘭さまだけ、午後のカヌーツアーを申し込んであったのだ。
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