オリオン日記(2002夏・西表島)その12(携帯版)


「さあっ、ここから登りますよぉ」

鬱蒼としたジャングルの中を、ガイドのロッキー刑事に従って川沿いを歩く事しばし、

「ここから急になりますからねぇ。各自、焦らずゆっくり登ってくださいよぉ。足元には注意してくださいねぇ。」

木々の間からピナイサーラの滝がチラチラと姿を垣間見せ、いよいよ本格的な登り坂である。
確かに、カンピレーへの道よりは急だし、荒れている。
でも、たかだか20分程度の距離だし、何の事無くピナイサーラの滝に到着。
決してワタクシが強靭な体力を持っている訳ではなく、同じツアーの小学生位のオコチャマだって、50台位のオジチャンオバチャンだって、へたばる事無く到着しているのだ。


真下から見上げる滝は圧巻で、見る位置が近いせいか、日光華厳の滝よりも巨大に見える。
ちょっとしたプールのような大きな滝壷があり、先客達が気持ち良さげに泳いでいる。
とうぜん我が家も飛び込む。
ここで泳ぐのはお約束らしく、我が家もキッチリと水着着用で来てるのだ。

「この滝はねぇ、ちょっと前までは落差60mだったんですよ。ちょっと岩が崩れちゃって、5mほど縮まっちゃった・・・」

無念そうに呟くロッキー刑事。
そんなのどっちだって良いじゃんと滝の上を見上げれば、滝の上に登ったシトがこちらを覗き込んでいるのが見える。
いいなぁ。行きたかったなぁ。
滝の上に登るには、ちょうど船を降りたあたりから、イッキに急坂を登る道を選ばなければならず、このツアーでは時間的理由で行く事が出来ない。
なにしろ船は2便しかないので、浦内川の観光船の様に

「次の船に乗るから、勝手に行かせてもらいます」

と言う訳にはいかないのだ。


「はぁい、そろそろ戻りますよぉ」

20分程度の、あっという間の滝見物は終了。
やっぱりツアーなんて、こんなもんす。
とは言え、これはガイドの人件費削減の為に急かされてる訳ではない。
満潮に合わせて船が遡上してるので、あんまりノンビリしていると川が浅くなって船が座礁してしまうからなのだ。
やはりじっくりと滝見をしたければ、カヌーなどで自力で来るしか仕方が無い。


いるもて荘に戻ってオコチャマのメシ。
朱蘭さまがいると、妙にテキパキはかどるはかどる。
そして午後は星砂の浜に。
やっとオトォチャンも海水浴なのだ。

星砂の浜のレストハウスに向かい、まずはそこで昼飯を食う。
冷麺&ソーキ蕎麦&オリオンでエネルギーを補給し、朱蘭さまと先を争うようにドボンドボンと海に飛び込む。
オコチャマも、浮き輪の下に足の穴が開いているヤツで海に浸けると、んもぉ大騒ぎではしゃぎまくり。
だったのに・・・・・
ほんの数分後、妙にオコチャマがおとなしくなる。
なんと、海に浮かびながら寝ていやがった・・・
とことんマイウエイ小僧め。
くぬやろう。
しかし、わざわざ叩き起こして泳がせる程の意義は見出せない。
オコチャマは岩陰に転がし、急遽持ち出したシュノーケリングセットで、夫婦2交代制にて、細々と八重山の海を堪能するのであった。


いるもて荘への帰り際に、星砂の浜の近くの『うめ工房』と言うミヤゲモノ店に寄ってみる。
シーサーや、なぜかネコ系の工芸品などを製造販売しているらしい。
看板を頼りに人里から離れたダート道を進むと、

「こんな所に店を構えてどうすんの?」

といった感じの所に工房はあった。
もちろん、クルマ無しでは厳しそうな場所である。
何気なく店内を見てるうち、入れ替わり立ち代り2組の客が来たりするので、全く儲かってない訳では無さそうだ。

更に、一台の軽自動車が到着した。
それはいるもて荘に常に止まってるレンタカーで、見慣れたオトコが降りてきた。
このオトコ、会話などを交わした訳ではないのだけれど、とにかく常にいるもて荘にいて、朝夕、玄関前のピーフンの上にパンやらコーヒーやらを並べて喰っているフシギな存在のオトコなのだ。
そしてココへはミヤゲを買いに来た訳ではなさそうで、なにやらダンボール箱を持ち込んできた。
ダンボール箱の中には店に並んでいるのと同じオミヤゲがギッチリと詰まっていて、それを店主が一つ一つチェックしている。
どうやら工芸品製作の下請けをしているのだろうか。

いるもて荘の宿泊費やレンタカー代などの経費を考えると、ババンと利益が出るほど儲かるとは思えない。
あくまでも島が好きでやっているのだろうけれど、ゴクローサマである。


遂に、西表島最後の夜を迎える。
もうアタリマエの様になってしまった、いるもて荘からの眺め。
沖を行く巨大船のような鳩間島の夜景も、これで見納めかぁ。
久々に、あまりノンビリ出来ない朝を迎えなければならない。
カバンの中に、溜まった洗濯物と思い出を詰め込にながら、今宵もオリオンに浸っていく。


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