南国大尽(2001冬･ﾓﾙｼﾞﾌﾞ)その3(携帯版)


13:20､定刻に成田を飛び立ったｽﾘﾗﾝｶ航空機｡
ﾓﾙｼﾞﾌﾞへの乗換えﾎﾟｲﾝﾄ､ｽﾘﾗﾝｶの首都ｺﾛﾝﾎﾞに到着するのは約10時間後､現地時間の20時35分だ｡
日本とｽﾘﾗﾝｶは時差が3時間あり､感覚的には真夜中の到着なのだ｡
その間､機内食は2食出ると聞いている｡
今回はﾋﾞｼﾞﾈｽｸﾗｽ､ﾒｼだって期待してしまおうではないか!!!

ﾍﾞﾙﾄ着用ｻｲﾝが消えて程なく､ﾊﾟｰｻｰがﾒﾆｭｰを持ってやって来る｡
おおっ!!ｺｰｽﾃﾞｨﾅｰになっていて､前菜･ﾒｲﾝﾃﾞｨｯｼｭ･ﾃﾞｻﾞｰﾄなどが､それぞれ2種類から選べるようになっている｡
相談するまでも無く､別々に一種類ずつ注文する｡
半分ずつ分け合って､両方を味わっちゃう作戦なのだ｡
｢ﾃﾞｨｽﾜﾝ｡こりもﾃﾞｨｽﾜﾝ｣
などと怪しく注文すると､わざと驚いた仕種を見せるﾋｹﾞのﾊﾟｰｻｰ｡
『全部別々でっか?おもろいでんなぁ｡で､飲み物はどないしはりまっか?』
｢ﾋﾞｰﾙ!!｣
これは選択の余地が無い｡
我が家は共に､ﾋﾞｰﾙが大好きなのだ｡
『ﾆﾎﾟﾝのでっか?ｽﾘﾗﾝｶのﾋﾞｰﾙにしまっか?』
｢ｽﾘﾗﾝｶ!!｣
『そりが良いですねん｡ｽﾘﾗﾝｶのﾋﾞｰﾙの方が美味いですがな｡』
大ぶりなﾜｲﾝｸﾞﾗｽのような物に注がれたﾊｲﾈｹﾝに似た感じのﾋﾞｰﾙをｵｶﾜﾘしながら飲んでいるうちに､いよいよﾒｼがやってきた｡
大きめなﾃｰﾌﾞﾙに順次皿が並べられ､そこいらのﾚｽﾄﾗﾝ程度の出来栄えだ｡

ﾒｼを食い終われば､当分やる事が無い｡
繰り返し写し出されているﾁｬｯﾌﾟﾘﾝにも見飽きた頃､二回目の機内食の時間となる｡
ちょ･ちょっと待っておくれ､じぇんじぇん空腹では無いよう｡
確かに､最初の機内食からは5時間以上は経過している｡
しかし､座りっぱなしでﾛｸに動いていないし､ﾋﾞｰﾙはｶﾞﾊﾞｶﾞﾊﾞ飲んじゃってるし､機内食を見くびって成田で昼飯も食っちゃったし････
朝飯から数えて､本日4回目のﾒｼなのだ｡
ﾊﾟｰｻｰに迫られてｹﾞｯﾌﾟをしながらﾒﾆｭｰを選ぶ｡
そうまでして食う必要は無いのだろうけれど､所詮ﾆｾ大尽のﾋﾞﾝﾎﾞｰ人だ我々は､出されるﾒｼを拒否する思考回路は持ち合わせておらず､せめて食前酒をﾋﾞｰﾙより腹に溜まらなそうなﾜｲﾝに変えて防御するしかなかったのだった｡
何とか食い尽くすと､ﾄﾄﾞﾒのｹｰｷがぁ!!
『新婚さんへのﾌﾟﾚｾﾞﾝﾄですねん｡』
箱の中のﾐﾆ･ｳｴﾃﾞｨﾝｸﾞｹｰｷ､今の状態ではｲﾔｶﾞﾗｾとしか思えない贈り物なのだった｡


そんなこんなのうちに､到着時刻が迫る｡
どこか羽田を思わせる湾岸地帯をゆっくりと降下し､ｺﾛﾝﾎﾞ空港の滑走路に滑り込むｽﾘﾗﾝｶ航空のA300旅客機｡
規模は大きいけれど､ﾀｰﾐﾅﾙﾋﾞﾙは日本の地方空港を一回り大きくした程度のｺﾛﾝﾎﾞ空港｡
免税店の立ち並ぶ奥に､高級ﾗｳﾝｼﾞが有った｡
ｵﾃﾞｺに赤いﾎﾟｯﾂﾘを付けたﾈｴﾁｬﾝに入室証を示して入り込むと､ここも酒類&食い物ご自由にどうぞの空間!!｡
なにやら興味を示すｵｰﾄﾞﾌﾞﾙも有るけれど､とにかく満腹のﾎﾞｰﾏﾝｶﾝ状態!!
とても味見をするどころでは無い｡
機内で貰ったｹｰｷだって､食えずに持ち歩いている状態なのだ｡
ﾁｮﾎﾞﾁｮﾎﾞとﾋﾞｰﾙを飲みくつろいでいると､なにやら館内放送で､我々が搭乗する便名が読み上げられている｡
様子を見に表に出ると､民族衣装に身を包んだ係りのｵﾈｰﾁｬﾝが､手に持ったﾄﾗﾝｼｰﾊﾞｰを振り回しながら､早く搭乗ﾛﾋﾞｰに向えと叫んでいる｡
まだ出発までには1時間以上もあるはずだけど､海外で乗り遅れたらﾋｻﾝとしか言い様も無い｡
慌ててお大尽ﾗｳﾝｼﾞを出て､搭乗ﾛﾋﾞｰに向う｡
例外無く全員に反応してしまう金属探知器を潜り抜けて搭乗ﾛﾋﾞｰに｡
狭い空間にはｳｼﾞｬｳｼﾞｬと日本人でごった返していた｡
通勤ﾗｯｼｭのように詰め込まれたﾊﾞｽが数台出て行き､我々が搭乗した時点でも､まだ出発まで30分以上もある｡
とっとと乗せて早めに出発しちまえ!という訳でもないらしい｡
ﾌﾗｲﾄ時間は1時間半程度だというのに､1時間近くも押し込められて出発を待つｴｺﾉﾐｰ客が気の毒だ｡


大急ぎさせた割りにはｷｯﾁﾘと定刻通りにｺﾛﾝﾎﾞを離陸｡
小一時間もすればそこはﾓﾙｼﾞﾌﾞ!!!
ﾘｿﾞｰﾄが待っているぞぉ!!｡
駄菓子菓子!!試練は有ったのだ!!!

前方から､ﾊﾟｰｻｰが何やら配りながら歩いてくる｡
ま･まさか!!!
大当たり｡
まさにそれは､機内食のﾒﾆｭｰなのだ!!
あれだけ苦しんで食い終わってから､まだ3時間も経っていないのにぃ｡
ｵﾏｹにﾗｳﾝｼﾞでﾋﾞｰﾙまで飲んじゃったよう｡
もちろん強制的に食わされる訳ではなく､辛い思いをしてまで食う必要は全く無いのだ｡
繰り返すがﾎﾝﾄはﾋﾞﾝﾎﾞｰな我が家､食い物を拒否できる育ちでは無い｡
協議の結果､一人分だけ注文し､半分ずつ食べるのが精一杯なのだった｡
嗚呼!!新婚ﾌﾟﾚｾﾞﾝﾄのｹｰｷ､いったいいつに食えるのだぁ!!

まるで妊婦が二人になった様な腹をして､眼下に迫ってきたﾓﾙｼﾞﾌﾞの首都､ﾏｰﾚ島を眺める｡
島全体にﾋﾞｯﾁﾘと立ち並ぶﾋﾞﾙ群の灯りが､暗黒の海に浮かびあがっている｡
歩いても1時間で一周できる小さな島の中に､7万人も住んでいるとの事だ｡
そんなﾏｰﾚ島のすぐ隣りにある空港だけの島､ﾌﾙﾚ島に着陸し､遂にﾓﾙｼﾞﾌﾞの地を踏みしめたのは23:30､日本時間だと午前3:30にもなる長い一日なのだった｡
そう｡ｺﾛﾝﾎﾞとﾓﾙｼﾞﾌﾞでは､さらに1時間の時差があったのだ｡


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