南国大尽(2001冬・モルジブ)その4(携帯版)
飛行機を降り、歩いて目の前のターミナルビルに。
リゾート島に渡るのは明朝で、今日はこの島のホテルに泊まる事になっているが、そのホテルの名前や場所などは一切判らない。
マーレ空港で待っているハズの現地案内人に全てを任せろと言う事になっている。
観光客やら出迎えの人々でごったがえすロビーで、
「お疲れ様ぁ!!あなたはJ旅行社のお客様でねぇ?」
などと声をかけてきたのは白髪の日本人のジイサン。
J旅行社の社員と言う訳ではなさそうで、明らかに他の旅行社のタグを付けた日本人旅行客を、人ごみの中から一本釣りのように次々と拾い出している。
各社共用の案内ジイサンなのだろうけれど、どういう経緯でモルジブで働いているのだろう。
ロビーから連れ出され、そこに待機していた日本人・現地人が入り乱れたスタッフ達によっていくつかのグループに分けられる。
我々のグループは新婚カップル風ばかり7~8組で、日本製の旧型マイクロバスに詰め込まれる。
目の前に浮かぶ首都・マーレ島までの交通機関は船しか無く、岸壁には高速ボートやドーニと呼ばれる壁を取り外した屋形船の様な船がウジャウジャと停まっている。
どの船に乗せられるのだろうかと考える間もなく、バスは港を通過して港湾設備の中を抜け、あっという間にホテルに到着。
ここは空港だけの島なので滞在するにはツマラナく、乗換えなどの一時滞在専用ホテルなのだろうか。
リゾートホテルと言うよりは、どっかのカイシャの保養所のような、高級感を徹底的に排除したシンプルさだ。
「いらっしゃいませぇ。お疲れ様ぁ」
日本人を含むホテル従業員がワラワラと出て来てお出迎え。
それぞれに翌朝の出発時刻を告げられ、ヨタヨタと部屋に入り込む。
外観とは違ってキッチリとした調度品が並ぶ広いツインルーム、我が家より広いではないか!!
フロが無くシャワーだけなのは、全く水の出ないモルジブなのでしょうがないのだろう。
窓からは海を挟んでマーレの夜景。
明日からのリゾートの為にはソッコーで寝なくては。
こちらでは日付が変わったばかりではあるけれど、日本時間ではもう明け方近いのだ。
モルジブの朝だ。
それぞれのリゾートを目指す観光客が行き先ごとに集められ、早い組は5時頃からマイクロバスに乗せられて出発していく。
リゾートまでの距離や料金レベルによる交通手段の違いにより出発時刻が異なる訳だけれど、我が家の出発は最も遅く10時頃の予定だ。
我々が滞在する予定のモルジブヒルトンは、モルジブでも最高級クラスのリゾートなのだった。
けっして
「一番高いヤツをぉ」
などとイヤラシく成金的に注文した訳ではない。
「水上ヴィラに泊まりたい。しかも、コンクリ作りの風情が無いヤツじゃダメ!!」
というポイントで選んだら、ヒルトンになってしまったのだ。
リゾートまでの足は船などではなく水上飛行機で、そんな訳で一番ノンビリと出発できるのだ。
滑走路が作れない小さな島に渡る手段としては、最高級な乗り物ではないか!!
船よりも眺めは良さそうだし、こりは楽しみなのだ。
定刻にバスが迎えに来る。
我々の他には新婚カップルが一組だけ。
昨日から見掛けた夫婦だけれど、ぜんぜんアツアツどころかロクに会話もしていない。
たまに業務連絡を交すだけなのだ。
「きっと見合い結婚し、式が終ってソッコーで来たんだぜ」
朱蘭さまとそんな事を囁きあいながら、バスに揺られて水上飛行機のターミナルへ。
『どうぞ乗りなはれ。準備できましたがな』
いよいよ搭乗だ。
そして一番前の座席をゲット!!
コックピットとの間にドアは無く、前が丸見えなのだ。
やったぁ!!
現れた操縦士は、スキンヘッドにサングラスといった巨大白人。
半袖のワークシャツに下は短パン、そしてなんとハダシなのだ。
横に座ったサンダーバード風の副操縦士、こちらもハダシだ。
おびただしいスイッチ類を二人がかりでいじりまくると、ゆっくりとプロペラが回り始める。
同時に、室内用扇風機も回り始めたのには思わず笑う。
爆音の割りにはゆっくりと海面を滑り、このへんはフツーの船に乗っているような感覚だ。
沖合いに出ると徐々に加速!!
何とも言えない振動と共に、海面が後ろに流れて行く。
コックピットでは二人がかりでレバーを押したり引いたり、ペダル状の物を交互に漕いだり、んもぉ忙しそうなのだ。
プロペラの爆音は更に激しくなり、「もうこれ以上ダメ!!」といった感じの壊れんばかりのイキオイに達した時、ふっと振動がなくなる。
離陸したのだ。
水深によって見事に色の違いを見せる海、そこに見渡す限り散りばめられた環礁や島々は、ドーナツ状だったり楕円形だったり。
青い海を背景に、まるでアメーバーやらミトコンドリアの大群の様だ。
そんな小さな島々にも小さな桟橋やこじんまりとした集落が見受けられるのもあり、小船で訪問したら大歓迎されそうな明るい漁村といった風情なのだ。
いくつかの雲の中を出入りし、観光パンフレットで見慣れた形の島影が見えてくる。
やったぁ!!我らがヒルトンのある、ランガリー島なのだ。
環礁の外側に打ち付ける白波、その内側は珊瑚礁という天然の防波堤に守られた穏やかな海、その中央に浮かぶ島から突き出して海上に鈴なりに連なる水上ヴィラ。
南国での我が家は近いぞぉ!!!
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