南国大尽(2001冬・モルジブ)その6(携帯版)



程なく、ランガリ島に到着。アリラウンジの目の前の桟橋に降ろされ、そのままアリラウンジの中でレクチャーを受ける。
壁が半分くらいしか無い作りで、九十九里あたりの海の家を高級化&トロピカル化したような、なかなか居心地の良いたたずまいである。
『ほな、ヴィラに案内しますねん。荷物は後で運んどきまっせ。ボチボチ行きまひょか』
現地人スタッフの後について砂浜を進む。
ここから先は水上ヴィラに宿泊するお大尽しか立ち入れない領域で、はしゃぎながら歩く我が夫婦、そして時折業務連絡を交わしながら付かず離れずギクシャクと歩く見合い夫婦。
道は海岸を離れ、背の低いジャングル風の小道を進めばニワトリの親子が前を横切る。
丸太と荒縄で作られたベンチやハンモッグ越しに再び見えた海、その向こうに我らが水上ヴィラの姿が見えた。

砂浜の海岸から10m程沖の海上に、ヤシの葉ぶき屋根のログハウスが立ち並んでいる。
このリゾートの【自然から賜った秘島】という歯の浮くようなコンセプトに準じて作られた外観であって、室内は木目調を基本とした高級ホテルクラスの作りである。
70平米は有るであろう立派なコテージで、なんとここにはバスルームさえ有る。
全く水が出ないモルジブにあっては、贅沢極まりない設備と言えよう。
フロが有るだけでもスバラシイのに、バスタブのデカさといったら、我が家の3倍もある。
こりは朱蘭さまと一緒に入れと言っているようなものだ。
ウオーキングクロゼットの中に、タオル地のガウンと共に浴衣がぶら下がっているのが思わず笑える。
恐らく欧米あたりのリゾート客は、これがモルジブ民族衣装だと思い込んで、ピッチリ着込んで目を細めてくつろいでいることであろう。
3人は寝れそうなダブルベッドのある居間、こんなの2人で使って良いのかと思わずフロントにデンワしたくなる程の広さである。
床にごろ寝すれば20人は確実に泊まれるなどと考えてしまうのは、ボンビーなライダーの宿命であろうか。
バルコニーに出る。木製のサマーベッド、パラソル付きの円形テーブル、3mくらい下にある海面に降りる階段まである。
見るからに涼しげに澄んだ海を挟んで、目の前のランガリフィノール島や遥か沖合いに転々と浮かぶ島々の眺めを目の当りにし、居ても立っても居られなくなって冷蔵庫まで走る。
これから昼飯を食いに行かなければならないと言うのに、んもぉルービ無しでは生きていけないシュチュエーションではないか!!!


ここに滞在中のメシは、3食共レストランで食べる事になっている。
ルームサービスで部屋で食べる事は出来るけれども、そこまでお大尽になってしまってはかえってツマラナイ。
レストランはランガリフィノール島にあり、こちらお大尽専用島であるランガリ島のアリラウンジでも、朝昼は食べる事が出来る。
但し、各食事時間が決められており、ヘンな時間に行ってもレストランは開いていない。
「好きな時間に食えないのかよう!!キャンプセットを持っていって、浜辺で勝手に作って食おう」
などという案も日本で考えていたのだけれど、マジで準備してきたとしても絶対にその様な事が出来る様な雰囲気ではない。
もちろん、食材などは島で売っていない。
島全体が一つのリゾートホテルのようなものなのだ。

探検がてら、ドーニを使わずに歩いて橋を渡ってメインレストランまで行く事にする。
桟橋を通り過ぎ、橋までは南国風の木々の間の道を進む。
砂地なので健康にも良さそうではないか。
現地人スタッフとすれ違うと
『どうでっか?楽しんでまっか?』
かならずにこやかな声が掛かる。
足元を連れ立って歩くニワトリの親子を指差し
『あれがモルジブバードですねん』
お約束ギャグながら、とにかく皆ひょうきんで明るいのだ。
植民地支配された歴史が全く無いので外国人に対する服従心や敵対心などが無い国民性であるのに加え、主従関係を感じさせる日本の高級接客業に見られる下僕的サービス精神とは考えが違うようだ。
まるで我が家に友達を迎えているような、一緒に楽しもうと言った雰囲気のフレンドリーさが心地よい。

橋に辿り着く。
海を渡る長大な木の道の向こうに見えるランガリフィノール島を目指し、とぼとぼ歩く。
北半球なので季節的には冬なんだろうけど、さすがに赤道間近の南国、日差しは強烈で
「日焼け止めは忘れずに。水を頻繁に飲まないと熱射病になりますよぉ」
といった係のオネーチャンの注意も最もである。
しかし、汗ダラダラ湿気ネトネトの東京の夏などと異なり、爽やかな海風を受けて決して暑さを感じない。
1月のモルジブは乾季にあたり、一年で最も好シーズンなのだそうだ。
後ろから来た荷物運び用のバギーを避ける為に橋の端っこにへばりつけば
『えろーすいまへん。気分はいかがでっか?』
などとノドカな声をあげて走り去る。

ランガリフィノール島に初上陸。
そそくさとメインレストランに向う。
アリラウンジよりは遥かに高級感は有るとは言え、やはりオープンタイプのレストランである。
高級そうな椅子やテーブルが並べられていても、地面が砂地なのが気持ち良い。
クーラーなどは無いけれど、ヤシの葉ぶき屋根からぶら下がった古風な扇風機の方がかえって快適なのである。
メシはバイキング方式であった。


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