フロントライン(2003夏・小笠原)その3(携帯版)


「父島への到着は翌々日の朝6時頃の予定となります。」
波に揉まれながらも、やっと本格的に小笠原に向かい始めた、おがさわら丸。
フツーでも、なかなか乗りごたえがあるというのに、それどころではない長時間航海味わう事になってしまった。
ノンビリと船に乗って過ごすシュチュエーションは嫌いではなく、それはそれで良いのだけれど・・・・
なにしろダッチロール状態に晒されているのだ。
ワタクシも朱蘭さまも乗り物酔いはしないタチだけれど、揺れるよりは揺れないほうが良いに決っている。
しかも、苦痛にあえぐオコチャマを見守るしかないのが辛すぎる。


昼前に、やっと八丈島沖を通過。本来なら、今ごろ父島に到着しているハズなのだ。
なんたって現時点で19時間遅れ。
この先は予定どおりに航行したとして、なんと船内2泊の、33時間の航海だ。
出航の遅れの11時間を差し引いても、8時間も余計に乗船する事になる。


ニンゲンってのは環境に慣れやすいイキモノで、イイカゲンに揺れが気にならなくなってきた。
もちろん、徐々に波も収まりつつはあるのだろうけれど、それにしても・・・・・・
オコチャマがイッキに回復を遂げたのにはビックリなのだ。
まるでスイッチでも切り替わったかのごとく、何の前触れも無くピキっと元気になってしまった。
もちろん、ホントにそんな音がした訳では無く、あくまでもイメージなのは言うまでも無い。
かえって、揺れによって意思とは異なる方向に走り出してしまうのを楽しんでいる始末なのだ。
コレは有り難い事に違いは無いけれど、メシを食いに行ってもじっとしていられなく、無意味に走り回ったりするから、それはそれで疲れる。
なぜなら、追いかける親だって、意思とは異なる方向に走り出してしまうのだから、なかなかタイホできないのだ。

八丈島の次に見える陸地は、もう小笠原圏内のケータ列島までオアズケだそうだ。
朝日に映えるケータを眺めながら、これから小笠原で待ち受けるだろう出来事にコーフンするべきシュチュエーションなのだろうけれど、遅れまくっているこの船がケータを通過するのは未明だ。
なんたって、父島到着が朝の6時だというのだ。
果して、そんな時間に上陸して、朝飯を食える所が存在するのだろうか?
まさか24時間営業の牛丼屋があるとは思えない。
小笠原で待ち受けるだろう最初の出来事が、飢えとの戦いじゃ情けなさ過ぎる。
そしたら、なんとも嬉しい配慮で、船の到着時刻に合わせて、いくつもの食堂が臨時の早朝営業を行うとの事。
しかも、いつのまにか、その食堂のリストまで作られていて、乗船客に配ってくれる有りがたさ。
もちろんタダで食わせてくれる訳では無いので、食堂だって儲けにはなるのだろうけれど、その手間ひまを考えると、感謝に値する事は間違い無い。
おそらく夜中のうちに大量の食堂リストを作っただろう、小笠原海運の関係者にも感謝だ。


さて、いよいよ父島・二見港が目の前に迫ってくる。
湾の奥まった所に見える港の岸壁は思ったよりもリッパで、ははじま丸らしき船がすでに停泊している。
その前方に回りこむように、おがさわら丸は静かに接岸すれば、ターミナルビル前の岸壁にはアリのように群がっている人・人・人。
ホテルや旅館からの出迎えだけではなく、変則ピストン航行の為にこれから乗船する客、それを見送る人々、もう大混乱なのだ。
待ちに待った上陸の感慨に浸るのもソコソコに、ホテルや旅館名が書かれたプラカードがアチコチで振りかざされる中を潜り抜け、ははじま丸の乗船ターミナルに急いで向かう。
我が家はこのまま母島を目指すのだけれども、おがさわら丸がベタ遅れとなった今、ははじま丸の時刻をチェックしないことには先に進まない。
なにしろ1日1~2便で、出航しない日もあるのでヤバいのだ。

100mほど先のチンチクリンなターミナルに手書きで書かれた時刻表を見に行くと、まったくのノンプロブレム。
そこには、おがさわら丸の遅れに合わせた、全面的に変更された運行ダイヤが示されていたのだ。
小笠原では、全てのスケジュールの基準が、おがさわら丸だと言うことを思い知らされる。
それは、スーパーマーケットの入り口に張られた
『今月の野菜の入荷日は○日、○日、○日・・・』
なんて張り紙からもうかがえるのだ。
しかし、もっともぉぉっと深い島民生活との関わりは、後ほど知ることになる。


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