フロントライン(2003夏・小笠原)その5(携帯版)
父島・二見港から2時間、定刻の12時に母島に到着。
ははじま丸を降りた乗船客は、出迎えのプラカードを頼りに、それぞれの宿ごとのカタマリに別れていく。
民宿に荷物を置いて身支度し、昼飯を食いにノンビリと外に繰り出してみれば、なんと店が開いていない。
メシを食いっぱぐれたのだ。
島内でメシが食えるのは「寿司屋」「南洋居酒屋風」の2軒だけで、どちらも昼は13時で閉まっていたのだ。
珍しくガイドブックなどでヒルメシ事情を事前調査し、
「ンマそうだなぁ、アハアハアハ!」
などと期待していただけに、これはショックである。
ガックリしながらも食い物を求めて徘徊すると、どうやら食料品を売っている店は、JAの売店と個人商店の2軒だけのようだ。
その個人商店はミニスーパー風の何でも屋で、ビールなどはキッチリと自販機で売られているのが有りがたい。
店の横のガレージのような場所では、ははじま丸から卸されたばかりの生鮮食料品に人々が群がっている。
この島で自給できる食料品は、海産物を除けばハコマメとかいう豆だけで、他は父島からの運搬品と言う事になる。
その父島だって「何でもありまっせぇ」なんて状態ではなく、おがさわら丸が週に一度、本土から運んでくる食料品に大きく依存している状態なのだ。
つまり、延々と運ばれた食料を、さらに延々と運んで初めて、ココで食えると言う事になる。
しかも、我々の乗ってきたおがさわら丸は一日遅れだったので、これらの物資も遅れてしまった訳だ。
そんなアンバイだから、母島の島民にとっては待ちに待ったお買い物の最中なのだろう。
とりあえず入手できたのは、コンビニ弁当風のパックに入ったチラシ寿司。
しかも賞味期限が一日切れている。
あとは、パンなどの比較的日持ちの良いモノ、そして菓子類。
ううっ、空しすぎる。
西表島、飛島に続いて、またまた昼飯負けしてしまった。この学習能力の無さ。
込み上げるイラダチを朱蘭さまになだめられながら宿に戻る途中、炎天下の道端で途方に暮れているワカモノ達を見かける。
ははじま丸の地下牢にいた連中だ。やはり食いっぱぐれたのだろうか。
キミタチも、離島をナメたらイケんのよ。
さて、メシを食ったらさっそくビーチに繰り出さねばなるまい。
集落のすぐ前は前浜と言う砂の海岸で、ココなら宿から水着のままで行ける。
この前浜、入り江の奥で波も静かなのだけれど、海が思ったほど澄んでいない。
それならば、島の南側に点在するビーチまで行こうではないか。
問題は、どうやって行くかである。
この島には、バスなどの公共交通機関は存在しない。
レンタルバイクやレンタチャリはあるけれど、レンタバイクはオコチャマ連れでは困難だし、道がアップダウンだらけなので、レンタチャリはかなりの体力・精神力が無ければ無理だろう。
ガイドブックによると、乗り合いタクシーと言うのが存在していると書かれている。
観光協会や宿を通しての予約制で、貸切の観光案内も行っているとの事。
しかし、観光協会に電話してみると、当日予約は受け付けないとの言うのだ。
そんなに計画的な客だけで、果してタクシーがやってけるのだろうか?
だいいち、予約満杯になるほど、客はいるのだろうか?
島内の道は事実上の一本道だし、乗合ならイキナリでも乗せられると思えるのだが?
すると、観光協会のオネェチャンが、そのヒミツをキッチリと明かしてくれたのだ。
その実態は・・・・
島にタクシー会社など無く、当然ながらタクシー車両も存在しない。
漁師や宿のオヤジなどの島民が、時間を都合してマイカーで客を運び、行き先によって決められている定額料金を貰うシステムだったのだ。
いわゆる、観光協会公認・斡旋の白タク行為であり、従って、最低でも前日までに時間指定で予約をしないと、 クルマは急に空いていないというのが正解だったのだ。
島内には無いハズのレンタカーも実は密かに存在し、その仕組みは同様。
島民が、空いてる時にマイカーを有料で貸し出すのだ。
まあ、島の実情からすると、部外者ごときが
「コレは違法行為だぁ!!」
などと、小鼻を膨らませながら叫ぶ必要も無いけれど、事故が起らない事を祈るばかりである。
オコチャマ連れで歩いていけそうなビーチである御幸之浜を目指す。
約3Kmほど山道を歩く事になるので、オンブヒモは必需品である。
辿り着いた御幸之浜は石がゴロゴロした浜で、外海だけに波がちょっと高い。
シュノーケリングをしている先客グループに聞くと、
「サンゴがステキ!うっふん」
などとコーフンしている。
浜と言うよりも磯と言ったほうが明快で、オコチャマを泳がせるのはキケンすぎ、ココでの海水浴はソッコーで断念。
でも、南方に続く海岸線と、点在するビーチの光景を見ているだけでビールがンマい。
なにしろ、人工的なモノがひとつも存在しないのだ。
ちなみに、母島には脱衣所やトイレがあるビーチなど一つも無い。
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