フロントライン(2003夏・小笠原)その9(携帯版)
父島での初めての朝を迎えた。
正確に言えば、おがさわら丸で到着した3日前の早朝が初めての朝なのだけれど、ロクに何も見ないまま母島に渡ってしまった為、事実上は今日が父島での初日なのだ。
フトンから抜け出して最初にやるべき事は、朝飯の調達だったりする。
我が家が父島での拠点に選んだ宿は、相部屋タイプのワカモノ向けエコノミー民宿。
宿のオバチャンが高齢&足が悪いとの事で一切の食事の供与は無く、要するに
「ベッドが空いてたら勝手に寝てなさい。もちろんタダじゃないわよ」
みたいな感じの、とにかくホッタラカシ民宿なのだ。
昨夜遅く、ははじま丸を下船した際も、もちろん出迎には来てくれなかった。
好き好んでココを選んだ訳では無く、ココしか空いていなかったのだから仕方が無い。
まあ、港から極めて近いし、唯一の和室を貸切で使わせてもらっているのだから文句は無い。
しかも、ヒジョーに安い事が有り難い。
テレビやクーラーがコイン式だったりするけれど、要は使わなければタダなのだ。
でも、果てしなくボロい!!
母島帰りの身からみれば父島は何とも大都会で、さすがにコンビニは無いけれど、目の前のスーパーが朝早くから営業していて、オニギリとかが購入できちゃったりする。
メイド・イン父島のオニギリらしく、その包装が「オカァサンのオニギリ」っぽくて微笑ましい。
おおっ!!
スーパーの脇の自販機を覗くと、なんとオリオンビールが売られているのだ。
コレは朝から飲むしかない。
こういう暑い環境では、やはりビールはオリオンがンマい。ンマすぎる。
オリオンをグビグビやってると、気候が変わらないから、なんだか沖縄に来ているように錯覚したりする。
もっとも、見た目の沖縄っぽさは乏しく、せいぜい植物が南洋っぽいって程度のモノなので、
『沖縄の白焼き』、もしくは『沖縄の並盛り』といったところだろうか。
我が家の本日の予定は、一日中ビーチでゴロゴロする事である。
前日の登山では思い切り体力を使ったので、その休息も兼ねてのプランなのだけれど・・・・・・
さすが大都会の父島でも、
「海水浴 = ノンビリ」
などと安易に決め付けるのは間違いなのだ。
もちろん、
「海ならどこでも良い」
と言うならば、サンダル履いてチョコチョコ歩けば徒歩数分で浜に着く。
しかし、
「せっかく小笠原に来たのだから、うんと小笠原っぽい、美的なビーチで」
などと考えると、一大決心が必要なバヤイも出てくるのだ。
例えば、父島では一番美しいと言われる『ジョンビーチ』は、アップダウンのジャングル道を2時間歩かなければ到着出来ないのだ。
そのライバルの『ジニービーチ』は、そこから更に30分歩く。
どうしても歩きたくなければ、シーカヤックでエッチラオッチラと行く手もあるけれど、それでは「ノンビリしに行く」とは言いがたい。
「究極のプライベートビーチ」などと称する初寝浦のビーチは、30分も階段を降りなければならない「帰りが怖い」タイプのビーチで、そりゃ「誰もいない」がウリになる訳だ。
なかには、「迷路のような山歩き。ガイド同伴じゃなきゃ行っちゃイケん」なんてビーチまであり、もはや海水浴ではない。
もちろん、クルマなどで簡単に行けるビーチだって、それなりにキレイなのだ。
レジャーだって、ある程度の妥協が必要なのは当然の事で、我が家はバスで小港海岸に向かう事にする。
そこならば、売店で食い物や生ビールなどが買えるらしい。
それは父島のビーチでは極めて恵まれた環境とも言え、それでもシャワーやら脱衣所などは存在しない。
そこまで設備が揃ってるのは扇浦ビーチの一箇所だけで、トイレさえ無いビーチが多数派なのだ。
この点は、沖縄とは一線を画す小笠原らしさではなかろうか。
かわいらしい小ぶりなバスは、運転手がアロハを着ていて南国情緒を意識している。
ハワイの真似とも言えるけれど、小笠原の初の定住者は、170年前にハワイから集団で連れてこられた移民だったそうなので、まったく根拠のないパクリという訳では無いのかもしれない。
二見港の集落を出るとすぐに、お馴染みのジャングル道となる。
真新しいトンネルをいくつかくぐった先に見えてきたのは、境浦のビーチ。
ココは、ビーチの目の前の湾内に、太平洋戦争中に魚雷攻撃を受けて座礁した輸送船の残骸が残っている事で有名だ。
何年か前に、このあたりの民宿に泊まった事があると言う朱蘭さまは、
「船の形が前よりも崩れてるような気がする。」
なんて事を言う。
それが聞こえた訳では無いのだろうけれど、アロハ運ちゃんが
「船は腐食によって年々変形し、その位置も徐々にビーチに近付いてきている」
などと解説してくれる。
次に見えてくるビーチは、ダントツの設備を誇る扇浦。
もちろん「小笠原では」というだけで、アタリマエの設備がアタリマエに揃っているだけなのだけれど、ここは全面砂浜の為にシュノーケリング向きではないとの事で、我が家的にはボツ。
砂浜と岩場がセットになってるビーチを求め、もう一山越えた小港海岸を選んだのだ。
もちろん、一山越えてくれるのはバスである。
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