友人に見せられた外観図は今までに無い軽快さを感じる近代蒸気にふさわしい形をしていた。作ろうと思い立ったのは、形で見たかったという単純なものだったが、ところがこの後長い戦いが始まるとは思いもよらぬことであった。それは、どうせ造るなら「けむ吐いて石炭焚いて走るやつを造ってやる」と恐れ多くも「5”ゲージ」で造ろうと思ったことである。 もちろん初めての挑戦である。無謀この上ないこの計画は小生の生き様そのままであもる。 鉄道模型は少年の頃見よう見まねで電源のコントローラーをつくり家のヒューズ(当時はブレーカーがまだついていなかった)を飛ばしたり、HOゲージと0ゲージをペーパーとファイバーグラス、板切れを集めて車輪とモーターと電球、パンタグラフのみ購入して何とか自前で作って短いレールを行ったりきたりで楽しんでいたことがある。 最近では子供のためにNゲージ始めたのだが、ついに「かみさん」に自分の為でしょうと見抜かれている。 (家が狭いので1畳のジオラマをつくり走らせている。車輌は全て既製品、値の張る編成を購入して子供に触らせなかったためばれたらしい。)
外観図を基に1/8.4縮尺で「A1」サイズの紙にT定規とコンパス、三角定規で製図を始めた。 市販本の外観三面図一枚を頼りにきっちり寸法を各部品ごとに縮尺しても機能するよう設計しながら当てはめてゆく、ボイラ、スチームエンジン、ピストン、リンケージ、動輪、従輪、安全弁、水ポンプ、コンプレッサー(水ポンプとして設計)配管、ブレーキ装置、キャブ周り運転バルブ、逆転器、エトセトラ,etc、ETC、わ〜〜こんなに設計できな〜い。鉄道好きで、チョットメカに強いだけが便りの自己流設計だ。みえるところは限りなくそれらしく、見えないところもそれらしく、 チョットは大胆にモデファイして、 しかしながら今後の苦難をまだ予知出来ないで居る段階である。書くとこれだけだけど仕事から帰って毎日と、土日際のほとんどをついやして3ヶ月ぐらい掛かったと思う。 分からないことだらけで図書館通よいや、その頃の家族サービスはもっぱら鉄道公園や博物館、静態保存のSL公園ばかりであった。何しろ始めて分かったことだが「小」なりと言えど本物の「SL」を造ることになったことに気が付いたのである。チャンと造らないと走らないことが分かったし本物と同じ機構が全て必要なことも分かった。
Aスチームエンジンに錆び汁が入るとエンジンの寿命が著しく損なうはず(錆び汁用ドレンできるか、他の方法で逃げるか) Bエンジン馬力の計算で極力シリンダーボアーを大きくしたいと思い構造に苦慮(スケールモデル的外観を重視) C動輪、従輪の質感をキープするためには鋳物を吹きたいが資金が足りない(どうしよう) Dメンテナンスを考慮して前部煙室とキャブの簡単な取り外し方。(スケール重視の設計なので困った困った) E輸送を考慮して下回りとボイラ周りの簡単分割方(最終的に分割して運ぶのは配管などの都合で難しそう) F火床面積をどこまで大きくできるか。(炎は縮尺できないからな) G機関車と炭水車の車輪制動だけでブレーキ力は足りるか(客車5両=大人15人ぐらい引っ張りたい) 等々各カテゴリに掛かる前に問題山積である。 :道具はどうする、資金はどうする金がな〜い!Nゲージの道具じゃどうにも成らないぞ(これが一番の難問となった)
|