ＡＺ時代；誕生-1

はじめに

　　ＡＺは現代人にとって健康な阿片剤の作用をもっている。阿片といっても、それはあくまで譬えであって、あの物質的麻薬のように救いがたい中毒作用をおこすというのではない。むしろ、味噌汁好きの人が毎朝でも一椀のオミオツケがなくては済まされぬのと同じく、健康な生体の要求である。
　ひとたび人の精神的皮膚にくいこんだＡＺの酵母菌は、放置しておいても、その人の自然の体温のもとに継続的に繁殖し、有害な雑菌をハネ飛ばす「抗性」を生体内につくり出したり、どんな異種微生物でも旺盛に呑みこんで消化する「喰菌作用」を強化する。

今、あなたが手にしている本は、劇薬ですから致死量に気をつけて読んでください。次の点に注意していただければ大丈夫です。
１．初めの章から順番に読むのをやめて、好きな所、面白そうなページから勝手に読んでください。
２．ウカウカすると、つい引っぱられて徹夜をしたり､電車を乗りすごしたりして、日常生活にさしつかえますから、なるたけ時間をかけてチビチビよんで下さい。
３．アタマで理解しようとすると苦しくなりますから、活字に目をさらすぐらいの軽い気持で、景色を眺めるように、文章のリズムに乗って行ってくれればよいのです。
４．全部よみおわるころには、明らかに、あなたの中に一種の「化学変化」がおきます。それが、独りでは処理できないほど烈しいものだったら、ご遠慮なく著者にご相談下さい。注射のあとの発熱のようなこともおこります。