メーヘル・ババ序曲
 彼はその声が神からのものだということを信じ、神命のままに家路に就いた。彼はボンベイの東南100キロほどのところにあるプーナ市の姉の家に落ち着いた。姉のピロジャは弟が帰ってきたのを喜び、嫁をもらってその土地に根を下ろすことを勧めた。シェリアルはなかなかその気になれなかった。結婚という縛りを恐れていたからである。ところが、ある日、彼は自分の家のドアの近くに立っていた。すると、5歳の女の子が字を書く石盤を握りしめて前を通るのが目に入った。半ズボンを穿き、お下げの髪の端を赤いリボンで結んでいた。シェリアルはその子を指さして、姉に「あの子がいい。結婚するならあの子だけに決めます」と言った。姉がうるさいので、口封じのためにわざとそういうことをいったのかもしれない。しかし、姉がその言葉を真に受けたので、彼は呆気に取られた。
 ピロジャは、この弟の性格として、いったん口に出したことは守るということを知っていたので、すぐにその女の子(名前はシリーン)の母親のところに行き、文字通りひざまずいて、30歳の弟を救ってくださいと懇願した。意外にも、シリーンの母親は快くその結婚申し込みを受け入れてくれたので、ピロジャの喜びは限りなかった。



                      在天神940217/1241

 シリーンの父母も敬虔なゾロアスター教徒であったので、妻の軽率な約束に一時は怒った父親も、約束は神聖であるという戒律に背くことができず、二人の婚約を許した。

                ―8/9―



 シリーンが14歳になるのを待って、シェリアルは結婚した。新郎は39歳になっていた。私と最後の妻・愉美子との年齢差と同じ4分の1世紀の開きである。シリーンが
                                 {未完}
7.メルワンの誕生
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